めしいらず

ベルイマン監督の 恥のめしいらずのレビュー・感想・評価

ベルイマン監督の 恥(1966年製作の映画)
3.4
戦争の気配が日に日に濃くなっていく島村、政治観にも人生観にも信条を持たず、信仰もなく、戦争にだってどこか他人事顔の夫婦が、それでも否応なく戦争の渦中に巻き込まれていく。二人はその場しのぎに卑劣に立場を変化させながら、鬱々として泣いてばかりいたいた夫は次第に図々しく、大きな流れの中で無力感に打ちひしがられた妻は弱々しくなっていく。だが彼らだけが狡いのではない。殆どの人は概ねそうだ。そんな信念のない者たちの心の脆弱さにつけ込み意のままに操ろうとする側だって同じことである。上辺を取っ払えば誰もが卑劣漢に成り下がる。それが人なのだ。恩を売り代価を求めた卑劣な恩人を殺して金を奪った卑劣な夫婦は、推進力を失った舟でどこに流れて行くだろうか。夫は手にした櫓で信条に死した者たちの骸を押し退けて舟を進め、妻は流されるまま心ここに在らずである。
めしいらず

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