第二次世界大戦時、英印軍のゴルカ傭兵(日本軍はグルカ兵と呼んだ)だったスヨグ・ビル(ガネス・マン・ラマ)は、 ビルマ戦線に駐屯し、男の本性を剥き出して生きていた。 しかし日本軍の攻撃の前にあえなく蹴散らされ、ほうほうの体でカトマンズに逃げ帰るが、 その心には癒しがたい傷跡が残された。 そんなスヨグ・ビルを戦地から凱旋した英雄だと褒めそやすばかりの飲み友達、 シブラージュ(ジャガット・ラスティア)は、スヨグ・ビルを妹たちに引き合わせたいと 自らの屋敷にスヨグ・ビルを招き入れる。 シブラージュの家は、青い花を満開に咲かせたシリスの木立に囲まれた大邸宅だった。 シブラージュの妹、次女のサカンバリ(サルミラ・グルン)は、 その家にひきこもって得体の知れない思索に耽る不可解な若い女。 彼女の性格は暗く残酷で、スヨグ・ビルを前にしても意地の悪い冷笑を返すばかりだった。 スヨグは、サカンバリに辟易とし、シブラージュのほかの妹たち、 長女のムジュラ(スーザニア・スッバ)や三女のサヌ(アプサラ・カルキ)へと興味を逸らそうとする。 スヨグ・ビルとサカンバリは、いくつかの機会に激しく衝突し、 サカンバリは、スヨグ・ビルの戦争犯罪と暴力性を容赦なく暴き立てる。 激しく心を揺さぶられるスヨグ・ビル。 それでいて、ふたりの孤独な魂は、心の奥深くで少しずつ共鳴し始めていた。 しかし、戦争体験による傷深い心を抱えたスヨグ・ビルと、 誰からも愛されることを拒み続けるサカンバリとのあいだに生まれた秘めやかな愛の交錯は、 その感情表現ににおいても、その態度と行動においても、痛ましい結果を予感させずにはいないものだった。