オトマイム

鏡の中にある如くのオトマイムのレビュー・感想・評価

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)
4.4
観るものの言葉を封じ込めてしまうような力強さ、凛とした美しさをたたえている。それは夏の孤島という舞台、登場人物の少なさによるシンプルな映像、また彼らの関係性から生まれる不安や緊張感、精神の病を抱えるカーリンの切羽詰まった表情などがダイレクトに作品を形作っているからだと思う。『第七の封印』を思わせるファーストカットをはじめ印象的な映像がたくさんあり、とりわけ舟の中姉弟がクローズアップされるショットはぞっとするほどの美しさだった。

神を信じながらその姿に恐れおののくカーリン、愛は神だと話す父。その概念は漠然としてつかみどころがなく、ベルイマンの迷いそのものであるようにも思えた。神の存在について明確な答えは示されない。

ところで壁を抜けるとか扉の向こうにある別世界とかいう幻想は昔から多くの人が持っていたのだろうか。ジャン・コクトーがよく使った演出だし小説だと『ナルニア国物語』村上春樹等々探せば他にもたくさんありそう。カーリンは壁を押し開けて"むこう"を見る。未知なるものへの恐れや好奇心の象徴なのだと思うけれど、なぜそれが壁のむこうなんだろう。


《神の沈黙三部作》第一作