ずっとコントラスト100みたいなバキバキの画面。コスタをドライヤー/ブレッソンと安易に混同し難いのは、彼は映画を白と黒ではなくその先の「光」「闇」まで解体して世界を捉え直そうと試みているから。
アップで背景が消失する墓地のサイレント映画的な画面繋ぎ、溝口=宮川的な舟と夜霧がスモークへ変わり縦構図に繋がるとジョン・オルトンになる荒唐無稽さ(いちいち指摘するのは野暮でしかないが)。
しかしその照明設計が最も感動的に収まっている瞬間は至ってシンプル、原初的な明暗対比という点に美学を感じた。
人々がひたすら歩く/走ることでおよそ物語映画とは思えない陰翳から抜け出し、ワンカットで光が推移していく照明のグラデーション。
或いは予め取り付けられていたスポットライトのような(話に全く脈絡のない)光源領域へ被写体が侵入した瞬間、突如白飛びした顔面が浮上するショットの素晴らしさ。
闇によって観客の視覚=全能性を剥奪した後、過剰な人工光で世界の「光」そのものを再発見させるような構造は映画的快楽に満ちている。