エディ・ロメロ監督はフィリピン国内では数々の賞を受賞した名匠。 しかし、フィリピンのスタジオシステムが崩壊し海外へ、低予算ホラー物がドライブインシアターで受けた事から、制作会社を立ち上げ、超低予算の安っぽいエログロ映画やアクション映画へと本格的に舵を切っていったようだ。
本作はH.G.ウェルズ『ドクター・モローの島』のパクリ映画。しかも、ロメロは以前にも同じくモローから着想を得た『残酷の人獣』を製作している(ロメロのクレジットはプロデューサー)。
本家モローは、32,77,96年と3度映画化されているが、本作で他のモロー映画と1番違うのは、ドクター・ゴードンが動機をはっきりと明言する点だろう、彼は「地球環境を破壊し自分達用に作り替えないと生きられない人間は、その内地球上に行き場が無くなる」と考えている。なので「人間は自然そのものの中で暮らせる様に進化しなければいけない」というのだ。作中で特に活かされはしないのだが、テーマ設定自体は面白い。
獣人の描かれ方にしても、
ゴードンは「動物を人間にする」のではなく「人間を動物に近づける」 という、モローとは逆の手法をとるため、本作での獣人は人間味よりも動物味を強調して描かれる。73年にブレイクする前のパム・グリアによるヒョウ女や、ラストで大活躍するコウモリ男等は迫力がある。
また、野生本能の暴走する瞬間に脈絡などある筈もなく、その描写の唐突さには説得力があり興味深い。
監督自身、「この時代のものは私のキャリアで最も出来の悪い映画」と言っている通り、出来はお世辞にも良いとは言えないし、劇中の半分以上を締める闘争劇の展開はめちゃくちゃだが、やりたい事は伝わるし、面白い箇所が幾つもある。