ペイン

ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!のペインのレビュー・感想・評価

4.7
先日、アカデミー助演女優賞を受賞した『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(6/21🇯🇵公開✏️)の名匠、アレクサンダー・ペイン監督による知る人ぞ知るマスターピース。

察しの良い方はお気づきになるかと思いますが、私の名前“ペイン”はここからサクッと頂戴させて頂きました🙇‍♂️

今観返してもその鋭い批評性と多面性に溢れており鮮烈。この邦題とポスターからは予想だにしない所へと我々を連れていってくれる怪作だ。

ネブラスカ州のとある高校。上昇志向の強い“優等生ギャル”ことトレイシー(リース・ウィザースプーン)は、生徒会長を目指して熱心な選挙活動を開始する。彼女には、かつて不倫相手の教師を退職に追いこんだという過去があり、そんなトレイシーに危機感を抱いた主人公の教師ジム(※『フェリスはある朝突然に』のあの人!)は、彼女の当選を阻止するべくフットボール部の人気者ポール(※若かりしキアヌ・リーブスの似ている俳優👀)を対立候補として仕立てあげるが…という話で、運命論であるとか、それに逆らうとどうなるか…みたいな実に皮肉の効いたブラックコメディなのだけれど、辛辣なようでいて根底の奥底にはどこか優しい眼差しをも感じる(※同時代のトッド・ソロンズにも奇しくも通ずる面もある)。

何度でもやり直せる、once againなUSA🗽🇺🇸たるものを風刺しつつも説得力をもって讃えてもいる実によく出来た脚本、演出の妙。コツコツと努力し、成功し、世間的に輝かしいキャリアを詰んでいるように見える人が必ずしも至上の幸福を得ているとは限らない。ささやかに見えて、一人でもこの上ない幸福感を得ている人もいる。本作はある意味、破壊と再生の物語にもなっている。

優等生ギャル、トレイシーの印象的なテーマ曲は、監督が好きだというマカロニウエスタンの巨匠、セルジ・オコルブッチの『さすらいのガンマン』からの引用。それにしてもリース・ウィザースプーンは、『カラー・オブ・ハート』然り、『わたしに会うまでの1600キロ』然り、『インヒアレント・ヴァイス』然り、『SING シング』然り、出演作品の質が良いなぁ。
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