OASIS

イブの三つの顔のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

イブの三つの顔(1957年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

小さな町に住む平凡な主婦のイヴが、多重人格に悩まされる様を描いた映画。
監督は「怒りの葡萄」等の脚本家ナナリー・ジョンソン。

1951年、度々起きる頭痛と記憶喪失に悩まされているという妻のイヴ・ホワイトを連れてやって来た夫のラルフ。
治療により一旦は症状が落ち着くものの、その1年後、イヴの身に変化が現れる。
大人しく慎み深かったはずの彼女が、突如として金使いが激しくなったり、娘の首を締めようとしたりと気性が荒くなってしまう。
多重人格という心の病の存在がまだ知られていなかった時代だけに、周囲の人達もそれにどのように向き合って良いものか、そして何をしてあげれば良いのか分からず悪戦苦闘する様子がリアルに描かれていた。
ましてや、自分がそんな病に罹っているという事を知る由もない当人自身が最も憐れで、突然悲劇に見舞われた彼女に同情の念を抱かざるを得ないのだった。

医師の目の前でイヴは突然態度を変え、イヴ・ブラックと名乗る。
それまでとは別人の様に、医師を誘惑したり男を手玉に取る様な振る舞いを見せたりと驚くほど積極的になるイヴ。
その様子に唖然となる医師達の驚きようが面白く、また、イヴのそのあまりにもな豹変ぶりにこちらも驚いてしまった。
精神に異常をきたしてしまったと、精神科病棟に入院させられるホワイト。
そこでも、ブラックが我が物顔で現れて医師を翻弄する様が妖艶で悩ましかった。

家へ戻り、夫と離れて暮らし、毎晩クラブに遊びに出るブラック。
ジェーンという新しい人格も生まれ、三人が三人とも違った生活を送る模様は一人の人間のライフスタイルとは思えないほどにハードだった。
夫を誘惑するブラックと、それに思わず興奮して抱こうと迫る夫。
ここはロマンティックコメディ風で笑ってしまったし、いつの間にかブラックのそのお茶目さの虜になってしまっているような感覚があった。

幼少時代の辛い別れが原因となり別人格が生まれた事が判明する後半。
原因を見せられてもその原理がいまいち分からなかったが、三人の人格を演じ分けるジョアン・ウッドワードの演技力が兎にも角にも素晴らしく、作品の質を根底から押し上げていた。
人格が変わる瞬間が目に見えて分かるほどのなりきりっぷりもさることながら、人格ごとにその身に纏うオーラすらも操ってしまう表現力に驚く作品だった。
OASIS

OASIS