hajime363

彼女と僕のいた場所のhajime363のレビュー・感想・評価

彼女と僕のいた場所(1995年製作の映画)
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ノア・バームバックが若干24歳で監督した処女作。
メロドラマっぽい邦題が付いておりますが、原題:kicking and screamingです。
意味としては“Against someone's will, with extreme reluctance on someone's part.”ということで要するに“駄々をこねる”ということですね。

大学を卒業したけれど定職にも就かず学部生の真似事をする男4人組。
その内訳は①皮肉屋②バカ③マヌケ④元カノの想い出で頭がいっぱいで一年で2回も財布を失くすやつ(主人公)。4人とも専攻は文学。

◆カフカの「変身」
今回もフランツ・カフカの「変身」が引用されます。
「イカとクジラ」でもそうでしたが夢に向かって自己実現する女性に対して、何も出来ない“虫”のような存在になる男性というモチーフが本作にも共通して見受けられます。
「イカとクジラ」が“親”になりきれない男女だったのに対して、本作はより抽象度が高く“何者にもなれない/なりたくない”というモラトリアムが描かれます。

◆文学
登場人物にモノを書く人が多いことも共通するモチーフです。
監督曰く「知的な人々の感情的な部分。他人の分析は得意でも、自分の事となると感情的になってしまい上手く対処が出来ない」ということに普遍的な面白さを感じているとか。
そもそも監督の父親が作家であり、母親は映画評論家ということで非常にパーソナルなモチーフなんですね。
自分は教養が無いので“おそらく含まれているであろう言葉遊び”的なものを楽しめないのが悔しいところです笑

◆感想
印象的だったのは地元のbarで働きながら8年も大学生を続けるチェット。
曰く「皆は獣医、弁護士とかになりたがる。俺は何かになるために学生をしているんじゃない。学生に“なった”んだ」と、手段ではなく目的/在り方としての学生というね笑
個人的にモラトリアムは「甘ったれるんじゃぁないよ!(逆水平チョップ)」って感じで好きじゃないんですが、チェットのように振り切ってて経済的にも自立出来ているのは好感が持てますね。
また、チェットと主人公がbarで会話する場面で“神様を笑わせるには? → 計画を立てることさ”というジョークが語られます。
こういうことサラッと言えるとモテるし、こういうことサラッと映画に盛り込めるノア・バームバックまじでイケメン。まじでイケメン。
思うようにいかないのが人生だから、不安にならないで一歩踏み出そう!良い映画だね!
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