マヒロ

欲望という名の電車/オリジナル・ディレクターズカットのマヒロのレビュー・感想・評価

4.0
故郷を失い行き場を失った未亡人のブランチ(ヴィヴィアン・リー)は、妹のステラ(キム・ハンター)の元に身を寄せるべくやって来る。元々お金持ちの家系だったブランチはステラの住む街の治安の悪さに驚くが、何よりステラの夫であるスタンリー(マーロン・ブランド)とはとことんウマが合わず……というお話。

舞台劇の映画化で、主要キャストは大体そこから続投しているらしい。まず目を引くのがやっぱりマーロン・ブランドで、汗や油まみれの汚いTシャツ一枚でウロウロし気に食わないことがあると当たり散らすなど粗暴な男で、散々暴れた後妻のステラに泣きながら謝ったりと典型的なDV男でもある。メソッド演技を映画界に持ち込んで革命を起こしたと言われてるマーロン・ブランドだけど、その真髄を映画デビュー作である今作でもすでに感じられた。
対するヴィヴィアン・リーも、初登場時から既にどこかヤバめの目つきをしており、明らかに普通の精神状態では無さそうな匂いをプンプン漂わせている。更には裕福だった頃のことが忘れられないようで、常にフリフリのドレスに身を包みお上品な態度を徹底するなど、その場に似つかわしくない行動を取り続けスタンリーをイラつかせる。
スタンリーは良くも悪くも男らしさの権化のような人間で、対するブランチは過剰なまでに女らしさを押し出した人間であって、そんなふたりのぶつかり合いはまさしく「男性」対「女性」の具現化という感じでシンプルながら異様な迫力がある。

直接的な描写はないが、インモラルな性的描写もセリフや演出で匂わされたりと、この時代のハリウッド映画にしてはかなり攻めた内容だったりする。ブランチはなぜ未亡人になったのか?というところも、劇中語られることだけでは分からない映画では描けなかった背景が元になった戯曲にはあるようで、時代が時代だったら更に踏み込んだ内容になってたんじゃないかと思うとちょっと惜しいところもある。

ブランチ役のヴィヴィアン・リーと妹役のキム・ハンター、そしてブランチと良い仲になる男性・ミッチを演じるカール・マルデンが揃ってアカデミー賞の演技賞を獲っていることからも分かるように、それぞれのキャストの演技力の素晴らしさがこの映画の大きな魅力に繋がっているように思える。マーロン・ブランドだけは受賞を逃してしまったみたいだけど、全く遜色はないし。
この人たちがほとんど元になった舞台劇から続投していることを考えると、場数をこなさなければいけない舞台で鍛えられると演技力もやっぱり違ってくるんだろうなぁと思った。

(2019.280)
マヒロ

マヒロ