明石です

血の祝祭日の明石ですのレビュー・感想・評価

血の祝祭日(1963年製作の映画)
4.0
古代エジプトの邪神を崇拝する頭のイカレタ男が、若い女性の臓物を神への生け贄として捧げるべく、連続殺人に手を染める話。ゴアフィルムの帝王ハーシェル・ゴードン・ルイス監督のデビュー作にして、世界初のスプラッタームービーと名高い(一部の変態ホラーファンの間では)伝説として祭り上げられてる作品。

開巻1分で入浴中の美女が襲われ、目ん玉をくり抜かれ脚を切断される。しかもその赤々とした切断面を忌々しいほどのクローズアップで見せるルイス印の悪趣味なカメラワークのお墨付き。こんな激越な作品があの呪われしヘイズコードの時代に作られたことを思うと、当時これを見た(見てしまった)人たちの衝撃たるや相当なモノだっただろうなと想像する、、アーメン。

2週間で十数人というジャックザリッパーも驚きの、リアリティを完全無視した驚異的な殺人ペースにも、遺体の一部を持ち帰り「神」に捧げる猟奇性にもワクワクしながら見た(1963年というと、そもそも連続殺人という言葉さえ生まれていないはず)。そして殺した人間の臓物で料理を作り、ケータリングサービスで客に振る舞うというまさしく血の宴な展開は素晴らしいですね。レクター博士や食人族より20年以上も前にこんなトチ狂ったことをやってる映画があったとは!!

予算の都合上か(あるいは単にこだわりの無さか)、ルイス監督本人が撮影監督も兼ねた本作は、舞台演劇をそのまま客席から撮ったかのような広角で変化のないカメラワークが特徴的で、丁寧なアップがかかるのはほとんどゴアシーンだけ、、というかむしろそこだけは執拗なまでの大写し笑。ついでに言えば、ただっ広いセットで撮られたことが丸わかりな響き過ぎの音響が少しばかり耳につかないでもない。しかしそんなことに期待してこの伝説的悪趣味映画を見る人がどこにいるでしょう。何を見せたいかがあまりにハッキリしている、ゴアこそが芸術なのだ!と言わんばかりの潔さにはむしろ好感ですね。まあ話によると、ルイス監督自身は芸術にはほとんど興味なく、ポルノに代わるドル箱としてゴアを選んだのが最初みたいですが。

そしてカメラワークや演出に凝らない分、登場人物の会話で全ての状況説明をさせる感じは正直かなり稚拙で違和感アリだし、シナリオなんかはあってないようなモノ笑。これを見てると、スケールも殺しのバリエーションも役者の狂気も増し増しだった 次作『2000人の狂人』は相当に大化けしてたのだなと。とはいえなるたけ多くの血糊をスクリーンにぶちまけることを目的に作られた映画の走りである本作は、その期待通り、血をたくさん見れるだけでミリョク的なのです。
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