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ニュルンベルク裁判 人民の裁きのくりふのレビュー・感想・評価

3.0
【じつは冷戦プロパガンダ・ホラー】

最近、そこそこホラーづいており、変わったところでこれもホラーじゃん、と思い出したので。

表向きはニュルンベルク裁判のドキュメンタリーですが、死がそのまま映されるホラーであり、さらに…。

ソ連映画で、笑っちゃうほどソ連が世界の中心です。ベルリン陥落でソ連軍が街に入ってくる様子がイントロですが、当然、ソ連兵がドイツ女性をレイプしていた様子などは出てきません。

60分ほどの映画は、裁判の様子が中心ですが、監督ロマン・カルメンはドキュメンタリーの名手と言われる人だったようで、情報の捌きが巧く、グイグイ盛り上げていきます。勢いあって、ナチ・スピーチに通じる力強さもありますね。

映像自体は貴重なものばかりですが。ポリコレな現代ではありえませんが、とにかくナチスを徹底的に、悪役に仕立てていきます。

ナレーションがスゴイ。ナチスの悪口が始まると、プロレスの実行中継並みに、熱くまくし立てるのです。

N「略奪者、えい児殺し、奴隷商人、暴漢、火付け、野蛮人!」
N「猛獣の集団、ばけものの勢揃いだ!」

ナチーズの皆さんが、法廷に向かって歩く時、ゲーリングさんが書類で顔を覆い、カメラの前を通り過ぎようとするのですが…すかさず!

N「顔を隠すなゲーリング!」

…野次かよ!ナチスの蛮行は、何であれ裁かれるべきですが、この映画のバイオレンスな仕立ては、ちょっと彼らが可哀そうにさえ見えてしまう。

最後は処刑後の死体映像、全員一人一人見せるのですよ。徹底しています。

で、さらにコワイのはその後。

本作、1946年の映画とはなっていますが、西側がナチス復活を目論んどる!気をつけろ!と結論づけて終わります。どうやら、ずいぶん後になって再編集したようですね。

正義のニュルンベルク裁判、という顔をしながら、正体は冷戦向け、東のプロパガンダだった!というホラーな映画なのでありました。

<2019.7.26記>
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