観々杉

不安は魂を食いつくす/不安と魂の観々杉のレビュー・感想・評価

4.8
老齢の女とモロッコ移民の男の愛と苦難。ニュージャーマンシネマの旗手ファズビンダー監督の代表作でありながら、長らく日本での上映が行われていなかった。メロドラマと人種差別が融合されており、温かいロマンスと閉塞感が共存している。出会った人のみならず近親者にまで二人が追い詰められる様が悲痛である。ダグラス・サークの『天はすべて許し給う』をベースにしており、また本作はトッド・ヘインズの『エデンより彼方に』へと影響を与えた。余談だが、本作でアリを演じた役者エル・ヘディ・ベン・サレムの生涯は映画に並ばんばかりの暗いものである。不穏で落ち着かない作風だが、それらを含めた雰囲気が芸術的な領域まで高められており、是非見ておきたい映画だ。
観々杉

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