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低開発の記憶-メモリアス-のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

低開発の記憶-メモリアス-(1968年製作の映画)
3.5
No.484[結局一番低開発なのは…?、傍観者を傍観する映画] 70点

キューバ映画史上最も重要な作品の一つであり、グティエレス・アレアの代表作。初めて見たキューバ映画が「ルシア」という残念な映画だったのだが、抜群のセンスが垣間見えるタイトルに惹かれ続けていた。

キューバ革命後に亡命か残留かを迫られたブルジョワ階級のセルヒオは家族と妻をアメリカに送って独りキューバに残る。掃除婦ノエミや田舎から出てきたエレナを都会風に洗練しようとしたが失敗し、彼女たちを或いはキューバそのものを"低開発"と切り捨てる。この諦念に似た自我のゆらぎを楽しむ映画といえばそうなのかもしれないが、自分本位さがそのまま女性蔑視や自国蔑視に繋がっていて、ただ単にヨーロッパに憧れてる惨めなオッサンにしか見えなかった。おそらく彼の理論で言えば人類全てが"低開発"であり、それにはセルヒオ本人も含まれていると思うが、本人は自分を傍観者としてその枠の中に入れてないのが腹立たしい。しかも、彼の言う"洗練"は"機会"と"習慣"によってしか得られないものだから、ブルジョワ自慢にしかなってないのもムカつく。

映画的な解決策はエレナの家族に訴えられて無罪になるという超どうでもいい話を推進力に進んでいくので"結局女じゃん"という議論に終始してしまう感じも残念だった。「ルシア」も本作品もオープニングは好きなので、キューバ映画はオープニングで爆散する運命にあるんだろうか。

しかし、よくよく考えてみると超つまんないことでマウントとろうとする人はそのへんにウヨウヨいるから、そういうイタイ人を眺める映画として、傍観者を傍観する映画としては優れてるんじゃないすか。

追記
なんか見たことあんなぁと思ったらエスリンダ・ヌニェスは「ルシア」にも出てた。二部ルシアだよ。
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