低開発の記憶-メモリアス-の作品情報・感想・評価

「低開発の記憶-メモリアス-」に投稿された感想・評価

No.484[結局一番低開発なのは…?、傍観者を傍観する映画] 72点

キューバ映画史上最も重要な作品の一つであり、グティエレス・アレアの代表作。初めて見たキューバ映画が「ルシア」という残念な映画だったのだが、抜群のセンスが垣間見えるタイトルに惹かれ続けていた。

キューバ革命後に亡命か残留かを迫られたブルジョワ階級のセルヒオは家族と妻をアメリカに送って独りキューバに残る。掃除婦ノエミや田舎から出てきたエレナを都会風に洗練しようとしたが失敗し、彼女たちを或いはキューバそのものを"低開発"と切り捨てる。この諦念に似た自我のゆらぎを楽しむ映画といえばそうなのかもしれないが、自分本位さがそのまま女性蔑視や自国蔑視に繋がっていて、ただ単にヨーロッパに憧れてる惨めなオッサンにしか見えなかった。おそらく彼の理論で言えば人類全てが"低開発"であり、それにはセルヒオ本人も含まれていると思うが、本人は自分を傍観者としてその枠の中に入れてないのが腹立たしい。しかも、彼の言う"洗練"は"機会"と"習慣"によってしか得られないものだから、ブルジョワ自慢にしかなってないのもムカつく。

映画的な解決策はエレナの家族に訴えられて無罪になるという超どうでもいい話を推進力に進んでいくので"結局女じゃん"という議論に終始してしまう感じも残念だった。「ルシア」も本作品もオープニングは好きなので、キューバ映画はオープニングで爆散する運命にあるんだろうか。

しかし、よくよく考えてみると超つまんないことでマウントとろうとする人はそのへんにウヨウヨいるから、そういうイタイ人を眺める映画として、傍観者を傍観する映画としては優れてるんじゃないすか。

追記
なんか見たことあんなぁと思ったらエスリンダ・ヌニェスは「ルシア」にも出てた。二部ルシアだよ。
キューバ映画史に残る傑作と誉高いにもかかわらず日本でDVDレンタルがされていないこの作品をBD購入して鑑賞。

キューバらしい熱気とドキュメンタリータッチの撮り方(というか実際の出来事を撮った映像も多分に含まれていそう)に始まって早々心を掴まれ、この調子で最後までいけば確かに名作として語り継がれているのも納得といった具合だった。

そして本題に入ると、熱量は減じてしまったけれども主人公の男の生活をぶつ切りにしてヌーヴェルヴァーグ的に描いたドラマにニュース映像や写真、果ては他の映画の引用を挿入するようなスタイルは中々個性的で面白味があった。

問題点としてモノローグが多すぎるところや主に語られる主人公とナンパした娘の顛末が非常にどうでもいいという(結構致命的な)ところがあるものの、映像自体や画面端で密かに映される風俗の模様とかが目を惹くシーンも多くて、その点は興味深いところではあった。

同じくキューバを描いた傑作である怒りのキューバと違いベタ褒めするようなものでもなかったが、買って損したと思うほどの駄作でもなかったから意を決して購入して良かったとは思う。(値段も劇場で見るのとそんなに変わらなかったし)
キューバ映画の名作
あまり歴史とかには詳しくないので分からない部分もあったけどすごく好きな映画だった。どことなくフランス映画みたいでした。

ヨーロッパを理想として、キューバと人々を「低開発」と見下す主人公。
女性にだけは積極的で、偶然通りがかった若い女性エレナを洗練された都会の女にしようとするが、ヘミングウェイから避難所としてしか見られなかったキューバと同じように、エレナもまた「低開発」だと分かり興味を失う主人公。
「エレナにはまるで一貫性がない。ものごとを関連付けることが出来ないのだ。それこそ後進性の証だ」というセリフが好きでした。
また見直したいと思った映画だった。
CHEBUNBUN

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4.1
【キューバ映画史上最重要作】
今年の夏にキューバへ行こうと考えているので、このキューバ映画のDVDを買って観てみた。

社会主義革命が成功し、カストロが本格的に社会主義国家形成を始めた1961年を舞台に富豪の小説家が亡命するか否かを悩むという内容。

かなりフランスヌーヴェルヴァーグやイタリアネオリアリスモのリアリズムと実験精神を意識した作風になっている。例えば劇中に当時の社会情勢を補足するドキュメンタリーが挿入されていたり、ジャズのリズムに合わせてシーンを乱雑に嵌め込んでいくあたりにその精神を感じる。

内容は至って文学的。ある富豪がマンションの上層階から、下界の者を双眼鏡で覗き、「奴らは低開発だ」と見下す。女を連れ込んで、盗聴なんかして品定めするが、自分に見合った女は見つからず「低開発だ」と捨てていく。

しかし、自分は国外逃亡する勇気がなく、どんどん社会主義に取り込まれていく。そのイヤーな葛藤、デカダンスが映画全体を包み込んでいた。

まさしく、1960年代にブルジョワだった者の地味に嫌な雰囲気をカメラに収めた一本と言えよう。
milagros

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4.5
キューバ映画は多様な素材をコラージュするのがとても上手い。キューバの全体像を的確に縁取りながら、個人の軌跡もくっきりと残す離れ業。

ブルジョアはどの映画においても敵にされる。この映画のセルヒオの生きづらさは、歴史に取り残される、不変の人々の声なき叫び。
稲生

稲生の感想・評価

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キューバ映画の名作。
面白かったというよりこんな撮り方もあるんだといった感想
spacegomi

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4.2
西欧への羨望と自国への諦念、シニシズムがそのまま己の身にふりかかってくるインテリゲンチャ。革命後の空白による実存の希求。めちゃくちゃ面白い。これは誰かの自伝なのかな?
主人公が耽溺する「芸術」と、無関心な姿勢を貫く「闘争」が、弁証法的に歩み寄って一つになる瞬間。エイゼンシュテインはもっと長生きして、この作品を観るべきだった。彼が音声映画に見出だした夢は、まさにこの作品によって叶えられている。アレアは思慮深く賢い映画作家だとつくづく思う。
KtkT

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2.5
何となく見るにはつまらない映画だと思う。劇中で何度もでてくる『低開発』って言葉や不自然なまでの繰り返しの編集は社会だけでなく、主人公も進歩がないということを比喩的に表現しているのかとか、色々考えながらみたら、興味深いのらかもしれない。
革命後のキューバに不満をもち、どいつもこいつも馬鹿ばかりだと、シニシズムの独り言を心のなかだけで呟く主人公。

でも、「女の子には触りたい」という思いだけは隠せず、ナンパしたり元カノを思い出したりする、かわいい主人公。

同じ動きをリピートする編集が面白い。
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