台風の直撃で転覆した青函連絡船で500人以上の死者が出た中、北海道岩内町では大火により町の8割が焼失する。函館署の弓坂は連絡船の死者が乗船名簿より多い2人を調べるうちに、岩内町の質屋強盗放火犯に行き着く。
▶︎実際の洞爺丸海難事故を舞台にした水上勉の有名推理小説を映画化。以降も何度かドラマ化され、そちらは鑑賞していたが、初めて内田吐夢監督作を観た。正に映画史を彩る名作。
フィルムを暗転させハレーションを思わせる処理は効果的だし、迫り来る波のシーン、クレーンでの撮影が1965年にこの迫力で行われていたことにも驚く。長回しのシーンや人物を捉える距離、構図も見事で現代でももっと見習って欲しいと思った。
根底にある極貧を語った刑事のセリフは印象的で今も語り継がれている。事件を追い過ぎた父が協力を請われ東京に行く際に餞別を渡すか揉めた家族のシーンが好き。
今だとそれは無理だろうと思わせる逮捕まで、逮捕からの展開もあるが、それは昭和32年の設定ということで納得したい。
作中に出て来た朝日温泉がこの小説に出てことで穴場となった後日談は、今も昔も変わらないなと思った。