アキラナウェイ

ペイド・バックのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

ペイド・バック(2010年製作の映画)
3.9
GEOで旧作・準新作が80円セールだったので、配信作品でも見放題じゃないもの等、諸々5本レンタル!

地味だけど個人的に応援しているサム・ワーシントンと演技派で強い女性が似合うジェシカ・チャステインに惹かれて、鑑賞。

原題の"The Debt"とは、「債務、負債、借金」の意。
過去に残した人生の"借り"を抱えたままの3人の男女が、32年の時を経て、導き出した答えとは——。

1965年、イスラエル諜報特務庁(通称:モサド)の工作員レイチェル(ジェシカ・チャステイン)、デヴィッド(サム・ワーシントン)、ステファン(マートン・チョーカシュ)の3名は、ナチスによる人体実験の罪で戦犯である、収容所(ビルケナウ)の外科医ディーター・フォーゲルを捕らえ、裁判にかける為に東ベルリンに潜入する。

これは!!
かなりゴリゴリ硬派な東西冷戦時代のスパイもの!!

レイチェルとデヴィッドが夫婦と偽り、不妊治療を受けるという名目で、現在は産婦人科を開業しているフォーゲルと接触する。

目の色を変える為に子ども達を失明させ、
腕と脚を繋げ替えて経過を観察する。
ナチス時代のフォーゲルによる人体実験の恐ろしさよ。
*直接的な描写はないので、グロ耐性がない方も安心です。

フォーゲル誘拐作戦、東ベルリンから西ドイツへの移送作戦、と手に汗握る展開が続く。

その中で2人の男の間で揺れる1人の女。
工作員の苦悩。
ああ、息が詰まる!!

アクションではなくサスペンス。
軽快さではなく重厚さ。
32年の時を行きつ戻りつしながら綴る物語は、
時の流れと共に深い哀愁を帯びていく。

1997年のレイチェルをヘレン・ミレンが好演。
時間軸を2つに分けていながら、ジェシカ・チャステインとヘレン・ミレンが魅力的で飽きさせない。
どちらもカッコいい!!

3人だけの秘密。
それは過去に封じた筈の負債。

「英雄としての名声」を手にして、
光の下で生きた筈だったのに。
嘘を抱えたまま闇の中で生きてきた3人。

その嘘という灯火(ともしび)を吹き消そうと
歩み始めたレイチェルの決意、そしてその行く末が悲しい。

「女神の見えざる手」のジョン・マッデンが監督、「キングスマン」のマシュー・ヴォーンが制作、脚本を手掛けていると知って納得。

派手さはなく、はっきり言って地味だけど、これは良作!!