安堵霊タラコフスキー

日本の夜と霧の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

日本の夜と霧(1960年製作の映画)
4.0
津川雅彦の追悼の意味も込め、最近改めて見てみようと思っていたこの作品を見た。

出番としては津川雅彦よりも渡辺文雄とか戸浦六宏の方が多かったけれども、顔が整っているおかげかイケメンとして一番印象に残った。

作品自体も、台詞の間違いや少しのつっかえを気にせずに長回しで撮る演出は、ちょっと自然主義が過剰にも思えたところもあったけど面白い場面も多かったし(佐藤慶が終盤思わず「体質改善」を「タイゼン」と略してしまった後の表情とか)、リアリズムを履き違えていると半ば唾棄した初回の鑑賞時よりは少なくとも好意的な心持ちで楽しめた。

その上この作品の長回しは前後で照明を演劇のように暗くして繋ぎを滑らかにする工夫がなされていて、それによりヒッチコックのロープのような質感が齎されていた点は中々斬新で面白かった。

安保闘争に関する話は今となっては他人事のようにしか聞こえなかったけど、そんな遠い題材でも十分面白いと思えたということは大島渚の演出や語り口が優れていたという証だったのだろう。