リドリー・スコット監督作、第73回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、録音賞、視覚効果賞、衣装デザイン賞の5部門を受賞した名作。
ちなみに同年アカデミー賞では『トラフィック』『グリーン・デスティニー』『エリン・ブロコビッチ』などが候補作として賞レースを争い、このラインナップを見るとまさにY2K。
今回、まさかの24年ぶりとなる続編公開タイミングに合わせて本作を見直すと、流石に時代を感じる描写もありながら、いま観てもシンプルに楽しめるエンタメ作品だった。
【物語】
西暦180年、議会制から皇帝制に移り変わり行くローマ帝国。
ときの将軍マキシマスは、他民族との度重なる戦争のなかで征服していき、その人望・実力を見込んだ皇帝アウレリウス帝からは絶大な信頼と共に次の皇位さえ彼に継承することを期待されていた。
制圧していくローマ帝国は残るゲルマニア帝国を征服することで念願の平和が訪れると考えられ、マキシマスもまた任務を終え、長い間故郷においてきた妻子に再会できることを心の拠り所にしていた。
そんな矢先、アウレリウス帝の実の息子で、マキシマスの皇位継承を快く思わないコモドゥスは父の暗殺を謀略し、その罪をマキシマスになすりつけて処刑を企てる。
処刑からなんとか逃げたマキシマスは故郷に戻ると村は最早襲撃を受けた後で、妻子の処刑された死体を目にする。
その後、奴隷商人のプロキシモに拾われたマキシマスは、死ぬまで戦う剣闘士=グラディエーターとなり、各地巡業で注目を浴びるようになっていき、やがてローマの中心、コロッセウムに戻り、コモドゥスへの復讐に燃える…。
【感想】
2000年当時、ビデオレンタルされたらすぐに家族で親と一緒に観た一本。
当時10歳そこそこだった自分としては、コロッセウムでの戦いシーンにアクション映画的な内容を期待していたけれど、首がハネられたり、マキシマスの心象風景がたびたび挟み込まれたり、なんかコモドゥスがナイーブだったり、…と正直あまりワクワクはしていなかったと記憶している。笑
ただ、24年ぶりに改めて見直すとシンプルに面白かった。自分も大人になったね。笑
続編『グラディエーター2』が複数の主要人物を上手く捌き切れていない印象があったのに対し、本作は物語がマキシマスのコモドゥスへの復讐という一直線で基本は進むので見やすく、マキシマスの国中から喝采を浴びるカリスマ性も物語を盛り立てる要素として引き込まれやすかった。
特にマキシマスのカリスマ性はすごい。
冒頭のゲルマニア帝国との戦争シーンは、当時の映画特有?のコマ落とし演出で正直どんな戦いが行われているのか若干見づらいんだけど、マキシマスが戦地にいるだけで自然と兵士たちが鼓舞されていくのはすぐわかる。
また、グラディエーターとなったマキシマスが地方巡業する際も、コロッセウムほど人がいなくとも、観客は彼を国の英雄とわかっていなくても、彼が活躍するだけで心躍り拍手喝采する。
なんとわかりやすいカリスマか。笑
ラッセル・クロウ、いまではすっかりふくよかになったけれど、当時のまだ引き締まっている肉体による説得力は凄かった。
一方の因縁の相手となるコモドゥスを演じるのはホアキン・フェニックス。
M・ナイト・シャマラン監督『サイン』より前の本作を観たときは「お兄ちゃんがリバー・フェニックスだよね」程度の、そこまで印象的な俳優ではなかった。
ただ、それでも本作のナイーブゆえに危ういコモドゥスという存在は悪役としてそれはそれで魅力的で、特に姉であるルシッラとの危ない関係性は観ていて良い意味で憎らしかった。
先述のコマ落としをはじめ、いま観ると現在では描かないであろうY2Kらしい映画描写が多く、裏を返せば御大制作時86歳、先日誕生日を迎え87歳となったリドリー・スコット監督は、常に時代に合った映像表現を映画に持ち込んでいるんだなぁということに感心する。
中盤の騎馬隊VSグラディエーターたちの戦闘シーンはいまほどCGを使えない分、生身の迫力があったし、そのあとの屈強な男とマキシマスの直接対決 with 虎、も意味があるかどうかはさておきとしていま見ても十分引き込まれた。
欲を言えば、マキシマスと中盤一緒に戦うグラディエーターたちを一人ひとりのキャラクターとしてもマキシマスとの関係性としても好ましく楽しんで観ていたので、後半に行くにつれ、戦闘シーンの規模が徐々に小さくなっていく=コモドゥスとの直接対決になっていき、各脇役たちがちょっと勿体ない扱いを受けるような気もした。
そして本作ラストで迎えた結末も、劇中のなかで16年経った『グラディエーター2』ではよりローマ帝国が腐敗していっている姿を観ちゃうと、マキシマスが命がけで成し遂げたことは何だったんだろう、と『スターウォーズ/フォースの覚醒』を観たときのモヤモヤに似た感情が湧きたってしまう。笑
本作を観てから続編を観ると、コロッセウムの上から闘技場を映すラストカットや、麦の穂に手の平を当てる場面、コロッセウムの砂を拾う場面など、本作と呼応する形で描かれる場面が多いことに気付く。
また、セリフも衣装も多数本作から引用、再利用されたりする。
正直、小ネタ満載系の続編映画はあまり好ましくはないけれど、それくらい本作の影響は大きかった、ということなのかな。