【不安の根源】
ジェラルド・カーゲル監督のオーストリア初のスリラー作品。1980年に同国で実際に起きた、殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を描き出す。
〈あらすじ〉
ジャケットにシャツ姿の青年が道路をあてもなく歩いている。一見平凡な青年に見えるが、彼の手元には銃が握られ、目つきもどこか異様だった。そんな彼がある屋敷の呼び鈴を鳴らし、出てきた老人を躊躇なく撃ち殺す。その数年後、刑務所から出所した青年は…。
〈所感〉
ジャケットに惹かれ視聴。実話だけにこれは確かにアカン…ってくらいには殺人鬼の異常な心理をそのまま追体験できる激ヤバ映画。
本作は1980年にオーストリアで実際に起きた、殺人鬼ヴェルナー・クニーセクによる一家惨殺事件を描き出したもの。“殺人鬼の心理を探る”という野心のもと全額自費でジェラルド・カーゲル監督が手掛け、ショッキングすぎる内容により、本国オーストリアでは1週間で上映打ち切りとなったという逸話がある。確かに殺人鬼のリアルな現場の心理がその不安定なカメラワークと表情や動きから具に伝わってくる。当たり前のことだが、実際人を殺すことって相当な労力だし後処理も考えると負担がデカすぎて簡単に行える行為ではない。それでも天秤をかけた時に、そちら側に傾く人間、それでしか快楽を得られない人間がいるというのも事実。そんな殺人の難儀と快楽が同時に描かれており、当事者視点で犯罪心理を学ぶこともできるし、結局異常者の心理など全く理解できないことだけが理解できたのが良かった。面白さは並。