Masato

アングスト/不安のMasatoのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
2.9
鬼才ギャスパーノエが60回以上鑑賞し、かなり影響を受けた作品として話題になっていたので鑑賞。

たしかに、ギャスパーノエ監督が影響されているとよくわかる映画だった。ノエ監督の初期作「カルネ」「カノン」と作風が全く同じであり、偏執的な性癖を持った主人公のモノローグが全編にわたって炸裂し、怖くなるほどにまざまざと変態のように事細かく描き出すことで、強烈な印象を残す作品だったが、本作も同じで、主人公の理解し難い思考回路が淡々とモノローグで語られ、淡々と人を殺めていく姿が描かれる。

しかし、やはりギャスパーノエ監督作は、本作の影響を受けつつ上位互換となるような作品を作り続けている。紛れもなく鬼才であり、そうそうたる煽りの宣伝を受けて期待していた観に行った自分は、慣れてしまっていて、自分の想像を超えることはなく、衝撃を受けなくて肩透かしを食らってしまった。特に、昨今では「The House That Jack Built」など、日々凄惨さも進化しつづけている。誇大広告とも言える宣伝にまんまとつられてしまったゲテモノ好きの私。宣伝が上手かった。

ただ、1983年という時代を考慮して見ると、上映禁止も頷けるほどに問題のある映画であり、同時に、如何に画期的な映画であるかというのは誰もがわかるだろう。
主人公の顔にひっつくように、そして、360度に動くカメラワーク。やや神のような視点で映し出される殺戮はかなり印象的だった。つねに足音が鳴り響き、行動のプロセスを細かに描き出していく編執さ。これは、癖のある演出をするギャスパーノエ監督の原点とも言える。

また、主人公のルックスも最高に良い。アレキサンダースカルスガルドとスティーブブシェミをかけ合わせたような、とても闇の深そうな恐ろしさのある形相。見ているだけで怖さを感じられる風貌なのは、もはやこの役のために生まれてきたのではと行ってしまっても過言ではない。発狂するシーンもなかなか。

なかなかに衝撃的な作品ではあるが、あまり期待しすぎないようにするほうが良いだろう。毎度カンヌで騒がせる者たちの元祖を見るという点で、良い経験にはなった。

鬱映画特集

鬱ランク E
Masato

Masato