kazマックスグローバーレッド

アメリカン・ニューシネマ 反逆と再生のハリウッド史のkazマックスグローバーレッドのレビュー・感想・評価

3.8
70年代のハリウッド映画はなぜ暗くて後味が悪い結末の映画が多いのか。

始まりは1930年代に制定された「ヘイズ・コード」。これは映画の中での汚い言葉・暴力・セックス・ドラッグは描かない、撃たれても血が飛び散らない、政府・警察・親は正しい、反発する者がいれば罰を受けるように描かなければならないというハリウッド映画の自主規制コード。

そんな映画が作られ続けて60年代に入り、世の中はケネディ暗殺やベトナム戦争に公民権運動が起こる激動の時代。でもハリウッドはヘイズ・コードに縛られてそんな現実はまるで存在しないかのような、家族全員で見れる生ぬるい夢物語の作品ばかり。

国の政策や古い価値観に疑問を抱き始めた若者がハリウッドのジジイ達が作る映画にウンザリして映画を見なくなったので、遂に1968年にヘイズ・コード撤廃。
きっかけは1967年『卒業』で禁断のセックス描写解禁、それから1969年の『明日に向かって撃て』で血が飛び散り『イージーライダー』ではドラッグを扱いアメリカンニューシネマと呼ばれる映画革命が起こり、そこからPG-13やR-指定といった現在の年齢別システムが始まるのでした。

それまでの映画はエンターテインメント、70年代の映画は突然観客に逆らい始め、反体制、若者の反逆と悲劇を描いた映画が量産されて彼らは共感を覚えたが、そんな時代も長くは続かない。現実社会でも負け続ける若者たちは敗北する映画にも疲れてきって勝利を味わいたくなりそろそろ現実を忘れる映画が見たいと思った頃に登場した映画が『ロッキー』
それからの映画は勇気や希望を扱い、80年代初頭に入ると「偉大なアメリカって凄いでしょ」って映画が増え始めた。

だから60年代後半から70年代後半にかけての約10年間は映画史の中でも特殊な作品が多く存在するのでした。

このドキュメンタリーの中でピーター・ボグダノヴィッチ監督の母親が言った「悲しい映画はもう見たくない、理由は実生活だけで充分」って言葉が印象に残る。それと実際の出来事のフィルムが使われてた中、本物のアビー・ホフマンが出ていた。あれはシカゴ7裁判 最中の映像だろうな。