櫻イミト

恐怖の島の櫻イミトのレビュー・感想・評価

恐怖の島(1945年製作の映画)
3.5
ロバート・ワイズ監督が初期に手掛けたRKOホラー。「猟奇島」(1932)のリメイク。

※あらすじは「猟奇島」と同じ。。。

ワイズ監督のフィルモグラフィーの中でも特殊な一本だった。まず驚いたのは、序盤の船の爆破シーンをはじめ、海の遠景、屋敷の外観、猟犬が登場するシーンは13年前の「猟奇島」本編フィルムの流用であること。爆破シーンで「おや?」と思い比較しながら観て判明した。(他にも屋敷に欠けられた大きな悪魔の絵も同じ物を流用していた)。このようなリメイク作は他に覚えがなく、悪く言えば手抜きだが、よく言えば編集マン出身のワイズ監督ならではの技と言える。

さらに興味深いのが映画の展開で、冒頭から屋敷に入るまでは流用映像も含めてカメラ割りまで旧作と同じなのが、屋敷に入ってからは大幅にシナリオ演出が変わりはじめる。旧作で不足していた人間描写が厚くなり、登場人物たちの行動の必然性が高められている。

そして、旧作は「キングコング」(1933)のジャングルセットを流用したアトラクション型サスペンスだったのが、本作は心理サスペンスの要素が強い秀作となっている。あえて冒頭は旧作と同じにし、その後の新たな演出展開で自らの個性を誇示しているようにも思えてくる。

旧作も本作もそれぞれの良さがあり甲乙は付けられないが、同じ素材でも演出によって大きく印象が変わることが実感できる貴重な機会となった。
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