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ワンダーガールズ東方三侠2のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.7
 舞台は前作の現代からまったく時代を変えた近未来。核で荒廃し、放射能に汚染された香港は水源が滅び、人々は貧困に飢えていた。浄水施設から運ばれて来る僅かばかりの水は、山賊たちの奪い合いとなり、とて庶民には手が出ない。各地で水の奪い合いが起こる中、アニタ・ムイの夫が政府の復興計画の陣頭指揮を取っている。ミシェールは大統領の補佐官となり、マギーは水を強奪し、より高く売る盗賊として暮らしていた。唯一アニタ・ムイだけは自分がワンダーガールズであることを封印し、夫との約束である「娘に母親が必要だ」という契りを頑なに守って暮らしている。冒頭、3人の再会から突然お色気シーンが始まり、3人と娘が同じバスタブのショットに収まる。ディストピア映画には裏切りと救世主と陰謀が付き物である。香港の民衆は徐々に大統領率いる政府の力を信じなくなり、そこに救世主が現れる。彼は人々を飢餓から救おうと、清き心で国の浄化に務めるのだが、その行動は志半ばで倒れることになる。この若き救世主を演じるのは、今作が映画デビュー作となった金城武である。ウォン・カーウァイの『恋する惑星』より1年早く出演した今作の金城武はさすがに演技が初々しい。彼は民衆の渦の中ではぐれたアニタの娘を無事に母親の元へ返すのだが、大佐の指令を受けたアニタの夫は内心それを快く思わない。多忙の中で2人の心はいつしかすれ違い、疑心暗鬼に陥るが、やがて2人の心に雪解けの瞬間はやって来る。しかし軍の陰謀が2人を引き裂いてしまう。

 戦争やクーデターにより家族がバラバラになる例はそれこそ山のようにある。今作においてもその舞台となるのは駅構内なのだが、アニタ・ムイを待つ夫と娘の元に、すんでのところで家族3人感動の再会を果たすはずだった3人は悲劇の結末を迎える。前作では刑事である夫をワンダーガールズとして影ながらサポートして来た良き嫁だったはずだが、夫に対し救世主殺害の疑念を持ったまま、ワンダーガールズに変身することのないアニタ・ムイの姿にはさすがにフラストレーションが溜まる。肝心要の主人公のクライマックスまでの投獄があったからこそ、マギー・チャンとアニタ・ムイの娘には大きなチャンスが回ってきたのも事実である。彼女たちは水源を探しに南へと向かい、決死の潜水を試みる。ここでマギー・チャンの政府側のライバルとして現れた男性が、若き日のラウ・チンワンである。いがみ合うマギー・チャンとラウ・チンワンの2人は、いつの間にか恋に落ち、決死の潜水の前に互いの気持ちを確かめ合う場面は、地味に泣ける名場面の一つである。この時のジョニー・トーとの出会いが、『ファイヤーライン』からの快進撃につながったのだと思うと感慨深い。
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