くりふ

フリーウェイ/連鎖犯罪 逃げられない女のくりふのレビュー・感想・評価

4.0
【赤ずきんちゃんビッチで生き抜く】

1996年の、ホワイトトラッシュの赤ずきんちゃんは、猛獣だらけの昏い街を駆け抜け、狼出たら、バッグから拳銃を引き抜く。

ある赤ずきん研究本で知り、借りてみたらばやー面白い! 無茶苦茶で(笑)。

ソフト化でタイトルは、原題通りの『フリーウェイ』に変わってますね。B級クライムアクション風パッケージですが、そうみると勿体ない。本作は、赤ずきんの1996年仕様、とみるところに真価があると思います。原題からして「寄り道してはいけません」への新解釈になっていますね。

ジャンキー娼婦の娘に生まれ、血の繋がらぬ父が獣となって自分を犯す。過酷な生い立ちの赤ずきんは家を失くし、おばあちゃんの家に向かうが…。

デヴィッド・リンチがオズの魔法使いではなく、赤ずきんをモチーフに、『ワイルド・アット・ハート』を撮ったら、こうなるのでは?我ながら紋切型と思いつつ、概要はそう言うのが一番手っ取り早い感じです。

マシュー・ブライト監督の演出は、マジかシャレか怪しいところが面白い。昔、ダニー・エルフマンもいたオインゴ・ボインゴのメンバーだったとか、面白い経歴を持つ人物のようで、他の作品にも興味が出てきました。エルフマンは本作にも楽曲提供してます。あのリズムはやっぱり効きますね。

本作の赤ずきんちゃんはとにかく、過激で過剰。でないと生き延びられない。道を指してくれる大人がいないから、自分で見つける道をまっすぐ進む。だからビッチなのに清々しい。リース・ウィザースプーンが見事嵌ってます。

一方、フリーウェイに現れる変態狼は、なんとジャック・バウアー!!(爆笑)これは『24』好きにはオイシイです。彼にこんな惨い性犯罪歴があったとは。90年代の狼は、知的職業に就き、奥さんもいながら猫を被って獲物を狙う…。

奥さんがブルック・シールズというのも意味深。白雪姫を被ったような女。子供の頃、娼館で働いた事など忘れた様子(笑)。だから悲劇に耐えられない。

さて、鮮血と銃弾飛び交う、赤ずきんバーサス狼の結末はどうなるか?これが、なかなか決着がつかないんですねえ…これが、面白いんです。

狼は赤ずきんの手(銃)で、猫かぶりも剥がされるんですが、世間は信じない。メディアという森が狼を隠し、いよいよ彼女は自分しかなくなる。

赤ずきんちゃんは、ぺロー版では、狼に食べられてしまいました。グリム版では、食べられても、大人の男が助け出してくれました。

しかし元々、上記の起源であるフランスの伝承「おばあちゃんの話」では、彼女は自らの知恵で、狼から逃げ出していたんですね。

だから本作の赤ずきんは、元祖の血を受け継いでいます。しかも堂々(?)と闘うヒロインとして、再生を遂げたわけです(笑)。

彼女の皮ジャンが赤いのは、返り血を隠すため。それが見抜けない狼は、手を出してはいけません。寄り道せず、フリーウェイをまっすぐに進みなさい。

<2012.1.6記>
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