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突撃のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

突撃(1957年製作の映画)
4.0
キューブリックが撮った戦争の不条理。20代で凄い!としか言い様がありません。「死にたくない」と前進できなかった兵士たちは命令に背き、敵前逃亡した臆病者なのか。罰せられないとならないのか。死を恐れる人間と、命を軽くみる非情な司令部が対比されています。

第一次大戦のフランスとドイツの戦いで、フランスの司令部の無策と野心から判断を誤り、多数の兵士たちが命を落としました。しかし、怯んで前進できなかった生き残りの兵士たちに、<士気がないからだ>と上層部の責任が被せられます。

主役のカーク・ダグラス演じる大佐は弁護士であり、軍法会議で兵士たちの弁護を進んで買って出ます。

短めの尺の中で、戦時下の軍隊の異常さ、政治家、国民、メディアとの関係、駒や盾でしかない下士官の命の軽さが端的に描かれ、キューブリックさすがだと思いました。

「死にたくない」と口にする兵士に、つい日本軍と比べてしまい、これはビンタされる、と身構えましたが、フランス軍では逮捕となり、処罰の対象で、極刑が待っていました。

こういうアプローチの戦争映画は初めてです。命を無駄にしない、理にかなった軍隊の指示命令を求めているようで、反戦を訴えるとまではいきませんが、無能な指揮官だと犬死にさせられる。それを唇を噛んで怒りを押し殺している兵士たち。戦争の非情さと不条理がうまく描かれていました。

カーク・ダグラスがキューブリックに最初のシナリオ通りに戻させたラストシーンは、まさに<戦争>を表していました。
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