キューブリック初期の傑作で、フルメタルジャケットを除く後期の作品群とは全く作風を異にするが出色の出来の作品。
日本によくいそうな無能な上官のせいで不条理な目に遭うカーク・ダグラスらを描いた作品で(その皮肉的かつ批判的な内容の為かアメリカでなくフランスの軍という設定になっている)、現場を理解せずに失敗を部下だけのせいにする上層部の人間らはさながらブラック企業の経営者みたいで非常に腹立たしい。
そしてフランス軍という設定もあってかマックス・オフュルスのように流麗な撮影と演出が目立ち、しかもそれでいて土臭い雰囲気がミハイル・カラトーゾフや後のタルコフスキーのモノクロ映画のようなロシア映画的質感を生んでいて、アメリカ映画らしくないこの味は独特で実に良い。
人間でいることに嫌気が差しつつも全体的に見応えがあり、かつ最後に少し人間の良心を垣間見ることができる心憎い作品だった。