いち麦

エイリアン2 完全版のいち麦のレビュー・感想・評価

エイリアン2 完全版(1986年製作の映画)
5.0
新作「ロムルス」鑑賞に先立ち劇場公開版より17分長いこちらの完全版を鑑賞。最恐の地球外生命体に対して現在の地球が持つ最高レベルの軍隊戦力を投入して接近戦を行なったらどうなるだろうか?…1作目を体験した誰もが考えることだろう。そんな観客の好奇心に応えるように1作目とは全く異なるアプローチ。こちらはこちらでアクション・ホラーの傑作と言っても良い。見直してみて同じJ.キャメロン監督による「アバター」での描写を彷彿させるような部分が既にあちこちに見られたのも面白かった。

1作目の結末から57年の時間を経たリプリー。始めはアメリカン・ソルジャー達の粗野な振る舞いとリプリーの慎重な言動は対照的だが、次第に彼女の存在感が増して絶大になっていく高揚感。息もつかせぬ死闘が連続する長い終盤山場の臨場感と緊張感は今見直してみても半端なく素晴らしい。
惑星LV426で生き残った少女ニュートとの交流はリプリーにとっては失われた娘との、いわば幻のような触れ合い。それを窺わすドラマ的な演出には潤いと安らぎ感があり、更に最後の山場での観客の感情移入にとても効果的だと感じた。夥しい個体数のエイリアンを殆どその姿を見せずに窺わせる中盤の演出もまた見事。更にエイリアンの生態についても知見を深められるような仕上がりになっている。

注意すべきは前作のディレクターズカット版の方では後に加えられた未公開Epのために、新たに体験が加わったリプリーの言動に微妙な齟齬を感じる部分がある。これは本第2作目のほうがこの第1作DC版より先に作られているために仕方ないことだろう。
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