半兵衛

レニングラード大攻防 1941の半兵衛のレビュー・感想・評価

レニングラード大攻防 1941(1985年製作の映画)
4.0
冒頭の一般市民である主人公が火薬に携わる仕事をしていたというだけで火薬を街に届ける任務の責任者にされていく過程を通して日常から非日常の戦争へと入り込んでいく語り口だったり、何もない街並みに突然敵軍の攻撃がはじまり次々と仲間が殺されて誰が死ぬか予想がつかないストーリーが『炎628』みたいでちょっと興奮してしまった。そうした展開により兵士でもないのにドイツ軍の包囲によって品物が供給できなくなった街に敵軍の攻撃激しいなか危険な荷物を輸送しなければならないし無理に荷物を運んだ結果襲撃されて仲間や味方が容赦なく殺されてそれでも命令を遂行しようとする主人公の苦悩と狂気が息苦しいまでに観客に伝わってきて「戦争のなかを正気でいることの難しさ」をまさまさと感じさせる。

戦闘がメインではないのに、本物の戦闘機を飛ばして俳優たちの近くを飛んだり爆薬が容赦なく炸裂して本物の爆撃を見せつけられているような迫力ある映像が凄まじい。さっきまで生きていた人たちが数分後には死体になっていたり、腕を吹っ飛ばされたり相次ぐ攻撃で身もだえて発狂したりするなどここまでやるかという描写も映画に戦場にいるようなリアリティをもたらす。

国としては任務を遂行した一般人を評価したい国策的な内容のはずなのに、仲間を次々と失い栄光などさして気にも止めず苦悩してしまう主人公の姿にペレストロイカ直前のロシアの状況がダブってくる。でも別の男が出来て別れた奥さんのエピソードは蛇足だったと思う、それまで冷たくしていた彼女に対して寛容な態度をとった主人公への対応はコントのオチみたいになっているし。
半兵衛

半兵衛