しゃけ造

コントラクト・キラーのしゃけ造のレビュー・感想・評価

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)
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カウリスマキ作品の中で一番好き。カウリスマキの撮影は基本的に淡々と写実的だが、時に大胆なあり得なさ、ファンタジーを取り入れる勇気があると感じた。その結果、台詞が少なくても画から感じる行間やキャラの心情が浮き彫りになり、グッとくる演出に仕上がっている。この作品はそれが特に顕著であり、メタファーを存分に取り入れながらも、わかりにくいことがなく情感がすんなり理解できる。
ストーリー的には、大元の「社会から疎外された者たちのひとひらの幸福」という点では従来作から逸脱していないが、若干サスペンス風味が入っているのが特徴。そのため、カウリスマキ特有の日常を淡々と映す街の風景の中に、引っかかるような不穏さが漂う従来作にはない焦燥感がある。このあたりは、アプローチこそ違えど小津っぽさを感じた。高い完成度の傑作。