バイク、女体、疾走する車載カメラの映像がけたたましいエンジン音をバックにカットバックする『スコルピオ・ライジング』かよというタイトルバックからしてただ事ではないが中身はもっとただ事ではなく高校の全日制生徒と夜間部生徒のめちゃくちゃ些細な行き違いをきっかけに(本人たちは和解したのに)学内に復讐と称する集団強姦が横行し全日のガリ勉は童貞を失ったショックで狂った性獣と化し「僕にはすべての女性が生殖器に見える!」と絶叫して痴漢、ストーキング、強姦未遂、覗きと性犯罪を乱発、この高校の教師でもある姉は彼を正常に戻すために文字通り一肌脱ぎ「恐れてはいけない!近親相姦を!」ってどうかしてるだろ!性獣を捕縛した警官が「大人なら見逃してやるんだが…」「私に言わせると最近の娘はスカート丈が短すぎるのが悪い!」と断言する異常世界なのでもはや「お互いの代表者を選出し話し合いで解決しなさい!」と状況の異常さに対して理性的すぎる解決策を提示する真面目枠の教師ですらかえって昭和のいる・こいる的に異常に見えて笑えてしまうほどだ!
自主退学を思いとどまらせようとアイススケートに誘った同級生に風俗嬢の夜間生徒が言い放つ「あなたの狙いはわかってる!私の故郷である信州の諏訪湖を思い出させようとしているのね!」など、なぜか固有名詞を律儀に言う狂ったパワー台詞には異常展開と相俟って笑わずにはいられないが、昭和の強姦しまくりされまくり映画にしては被害者を中心に女子生徒陣が物怖じせずハッキリ異議を申し立てるという謎にフェミニズム的な面もあり、ふざけているのか真面目なのかわからない。たぶん、どちらでもなく壊れているのだろう。
昨今、性暴力を巡っての法改正や強制わいせつの構成要件である抗拒不能の範囲拡大が行われ、性犯罪被害者の負担軽減と性犯罪の処罰の適正が図られているが、なぜそうしたことが必要なのかこの映画を観ればよくわかるので、壊れているがタメになるという、意味のわからない怪作である。