さわだにわか

あの優しさへのさわだにわかのレビュー・感想・評価

あの優しさへ(2017年製作の映画)
3.4
最初に観た小田香作品はサイバーパンク的生命力が荒々しく波打つ爆音ノイズ映画『鉱』だったためタル・ベーラの下で映画を学んだという経歴も読んでこの人はとても強靭な自己を持ったハードコアな映画作家なんだろうと思っていたのでデビュー作のセルフドキュメンタリー『ノイズが言うには』とその続編で小田香自身による作品解題でもあるこの映画『あの優しさへ』を観た時には俺が勝手に抱いていたイメージとは180度異なるナイーブさに驚いた。と同時にこれはこういう意図でという風に作家自身が率直な言葉で語ってしまうものだから『鉱』の帯びるマジックが消えてしまったようでちょっと残念でもあった。

『鉱』や『セノーテ』には何の説明も無くてもその輝きのようなものが伝わる人にはちゃんと伝わる強い力があると思ってるので、その意味でこの小田香解体新書は蛇足だと思うが、それでも映像に残しておきたかったという表面的にはナイーブなようでそのじつ強靭な意志が、やはりこの映画にも刻まれていたのだろうと思えば、否定できるものではない(だいたい何を作ろうがそんなもん映画作家の勝手だろうし)。新作『アンダーグラウンド』も大いに楽しみ。
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