緑

ヨコハマメリーの緑のネタバレレビュー・内容・結末

ヨコハマメリー(2005年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

HDリニューアル版を鑑賞

横浜は伊勢佐木町を中心に
メリーさんと関わりのあった人たちの証言と
少しのメリーさん当人の記録映像、
そして最後に横浜から離れて隠遁しているメリーさん。

序盤、初対面の元次郎さんにリサイタルのチケットをもらい
観に行ってプレゼントまで持っていく
メリーさんの律儀さにもう涙腺が緩む。

元次郎さんに始まりメリーさんに関わった人たちや
かつての横浜や性風俗に詳しい人たちの証言が豪華。
元気な団鬼六を観られたのが個人的僥倖。
メリーさん全盛期のニックネームが「皇后陛下」だったとか、
風俗ライターによる当時の横浜の娼婦には
白人専門、黒人専門と「啞パン」の3種類がいたとか、
ギョッとするようなパワーワードが出てくる。
メリーさんの本名と思しき名前まで。
誰が語るメリーさんも断片情報ばかりだが、
数々の情報が集合体となり、
気位が高く、独特の世界観を持ち、
疎まれたり愛されたりしながら、
家もなにもかも失いながらも生き抜いてきた様子がわかる。

娼婦になるまでの話は出て来ない。
惚れた将校を待つために横浜を離れなかったメリーさん。
いくつになっても「女」。

末期がんの元次郎さんが病院を抜けて
本編中では明かされない地方都市の養老院へ慰問に行く。
小さな舞台でシャンソンを歌う元次郎さん。
客席には入居しているご老人の面々。
ほとんどの観客は元次郎さんを知らないであろう中、
ひとりだけ頷きながら聴いている老女。
横顔の特徴的な顎のラインでわかる。
薄化粧のメリーさん!
とても穏やかな表情をしていて、
横浜での晩年は家もなくしんどい日々だったろうに
今は落ち着いて暮らしていることや、
元次郎さんと会って話す笑顔に涙。
カメラ目線での笑顔もあり。
監督は泣かせるつもりで撮った訳ではないらしいが、
いや、偲ばれることが多すぎて泣きますわ。

テロップの入り方に癖があり好みは分かれそう。
編集は特にタイトでもだらだらでもなく。
最初の公開当時直近のメリーさんが
映っているだけでこの作品の価値は担保されている。
観てよかった。
渚ようこによる「伊勢佐木町ブルース」も良き。
メリーさんを題材にした一人舞台の話は良かったが、
彼女が舞台での衣装と化粧で実際に街を歩く姿は
個人的には蛇足だったと思う。

上映後の監督とプロデューサー兼編集の話によると、
他に最初の編集のフィルム版とデジタル版があるそうだ。
フィルムと見比べたい!
今回再編集でのHDリニューアル版ができたのは、
新型コロナウイルス流行によってできた時間に
プロデューサーが断捨離していたら
本作のマスターテープが出てきたことによる。
それまでは元々の配給会社が潰れて
マスターが行方不明になっていたそうだ。
再編集完成が10/5で公開初日が10/9という突貫工事。
ありがたいこと。
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