ねぎおSTOPWAR

9日目 〜ヒトラーに捧げる祈り〜のねぎおSTOPWARのレビュー・感想・評価

4.3
そしてあらためてシュレンドルフ監督遡り・・。


地味だと思うんです、この映画。
派手じゃないし勧善懲悪でもない。
でも考えれば考えるほどに胸が痛くなる。
すごい映画だと思います。

****
実在した、神父ばかり集めたダッハウ収容所。
そこを生き抜いたクレーマー神父のお話です。

この方は本名は違いますが、戦後、経験したことを本にしたそうです。
ある日突然釈放され、故郷ルクセンブルク🇱🇺に帰るわけですが、そこにはナチスのバチカン懐柔策が潜んでいました。

「わたしにユダになれというのか!?」

つまり裏切れってことですね。
ナチスのゲプハルト中尉は、タイトルにもある9日間でルクセンブルクの司教をナチス側につかせろと言うわけです。出来なければお前を収容所に戻す。もし逃げたら家族と収容所の仲間は殺す!と。

またね、シュレンドルフ監督はその後の作品ほどでなくともこの二人の議論ってのかな、やり取りを濃密に描くんです。
この映画観るにあたり、ユダヤ教がまずあって、イエスが出てきたところからキリスト教が分派して出来たことは知っていたほうがいいです。あとユダって存在も。

****

世の中のナチス絡みの映画の大部分は、ユダヤ人が作ったと言っても過言じゃないでしょう。ナチスによって国外に追い出された中には、元々ドイツ映画界を支えたユダヤ人がたくさんいたし、ハリウッドはニアイコールユダヤ。
別にユダヤだからどうということではなく、ちょっとこのテーマに関しては一方的な視点でのみ描かれているような偏りを感じます。

だからフォルカー・シュレンドルフ監督作品に出会えて良かったと思うわけです。
ドイツ人自身が描くナチス映画っていったいどのくらいあるんでしょうね。少なくともわたしは今作が初めてです。あっ「パリよ、永遠に」「シャトーブリアンからの手紙」もそうか。シュレンドルフ監督の3作しか知らない。
1939年にドイツで生まれて戦後1956年にパリに移住した彼・・戦中16年の記憶を抱えて侵略した国フランスに移り、おそらくは差別も受けたでしょう。自分が加担したことでもない・・だってジョジョじゃん!ジョジョラビットがその後10年してパリ行って映画を学ぶんです。
どうしても逃れられない呪縛にカメラを向けたのはここ30年くらいですね。

是非ご覧いただきたい映画です。