爆裂BOX

ラン・オブ・ザ・デッドの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

ラン・オブ・ザ・デッド(2010年製作の映画)
4.3
近未来のロンドン。製薬会社の新薬の臨床実験中、被験者達が副作用で凶暴化。常人離れした身体能力で襲い掛かり感染を広げていく。製薬会社の企業傭兵であるコールは自身も感染しながらも唯一発症しなかった被験者の女性に希望を託し行方を捜す・・・というストーリー。
ジャケットでも説明している様に本作のゾンビはパルクールの使い手なので三角跳びで襲い掛かったり、窓を飛んで潜り抜けたり障害物はピョンピョン跳んで乗り越えてきたりと中々ユニークです。ただ、直接跳んで襲うシーンが少ないのは危険だからかな。ゾンビメイクも時間の経過と共に血管が黒く浮き出してきたりと凝っています。ただ、低予算ゆえか一度に登場するゾンビの数が少ないのがちょっと残念です。
ゾンビとの戦いには銃も使いますが主武器がトンカチなのも面白いです。襲い掛かって来るゾンビをトンカチでガンガン殴りつける戦い方は生きる為の必死さが伝わってきて良かったです。
街中のパニックシーンもそれなりに迫力あって良かったです。
また、人間ドラマも真面目に描かれています。特にヘリの搭乗人数を巡る疑心暗鬼のドラマは途中合流するイヤミなカップルがイイ味出してました。本当にクソカップルという感じですが、最期のシーンなどお互いの事は真剣に想い合っている所は良かったですね。
主人公のコールさんはとてもカッコ良かったですね。発症を薬で抑えながらも犯した罪を償う為に奔走する姿がカッコ良かったです。彼の「許して貰おうとは思わない。ただ、自分に出来る罪の償い方を全力でやるだけ」という贖罪への考え方は結構好きです。最後も自殺エンドではなく、発症するまで戦い続ける道を選ぶ姿は本当カッコいい。前半で感染して抑制剤を使って発祥の発作を抑える所はちょっとゲームの「ダイイングライト」を彷彿しました。
元警官のジョーはコールと衝突したりもしますが、全てはヒロインを必死で守ろうとする気持ちが故という所も良いですね。彼が起こした事件は詳しく語られませんが、事故の様なものだったのかな。コールにも「お前は人を殺せる人間じゃない。俺みたいになるな」と言われてましたし。ヒロインを守り抜き、コールと共にゾンビ達に立ち向かう最後はカッコ良かったです。イギリス映画でよく見る俳優ダニー・ダイアの演技も良かったですね。
ジョーの親友のスティーブンはかなりの善人でしたね。彼が死ぬ所は切ないです。クレイグ・コンウェイは「ドゥームズデイ」のモヒカン男の時とは180度違う役柄で魅せてくれました。
前フリの序盤がちょっとダルかったりお食事シーンが無かったりゾンビとの戦闘が少なかったりと不満点もありますが、極限状況で繰り広げられる疑心暗鬼のドラマ、主人公の(そしてジョーの)贖罪の物語等かなり真面目に作られていて「~オブ・ザ・デッド」の中ではマトモな出来の作品だと思います。