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ニックス・ムービー/水上の稲妻のmanamiのレビュー・感想・評価

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ヴィム・ヴェンダース作品鑑賞6作目。
『理由なき反抗』などのニコラス・レイ監督が死の淵に立たされている様を描くという、これまでとは異なるタッチの今作は、1979年4月8日のニューヨークから始まる。
映画を作っている様子を撮っているドキュメンタリーと、そのドキュメンタリーを作っている様子を演じているモキュメンタリー、なのかな?その二つのパートが交互に描かれる。
ただしその境目がはっきり示されることはなく、ニックがヴィムに作品の構想を語り始めると、いよいよ何が何やらとなってくる。単語一つ一つの意味は理解できるのに文の意味はつかめない、まるで私にとっての「充填問題」のようだわ。
「君の映画にしよう」と改変を提案されると、「君自身の映画でもある」と諭すように釘を刺すように告げるニック。病院でまでカメラを回す彼らは撮る方も撮る方だが、撮られる方も撮られる方で、みんなひっくるめて映画という抗えない魔力に支配されているよう。人間としての友情を、映画人の性が踏み荒らしていく。
タバコをふかし、攻めた演出を指示して映画を撮る。それが命を削っていることは誰の目にも明らかで、おそらく自分自身が誰よりも感じているだろうに、彼は止まらない。止まることができないのか、止まりたくないのか、止まることこそが恐怖なのか。
かなり序盤でニックが「変な夢を見た」と騒ぐ場面がある、まさに変な夢のようなシーンが続く、変な夢のような作品。しかしどんな姿になり果ててもニックは常にそこにいて、正真正銘、NICK'S MOVIEであり続ける。そこはぶれない。
それと印象的だったのは、ニックのファッションがとっても洒落てること。服がラックにたくさん掛かってたし、オシャレさんだったのかな。それとも、そういうのも自分自身への演出の一部だったのかもしれないな。

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