さすらいの用心棒

にっぽん泥棒物語のさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

にっぽん泥棒物語(1965年製作の映画)
3.8
列車脱線事件で有名な「松川事件」。その犯人を目撃した泥棒の証言によって裁判が覆った実話をもとに映画化されたコメディ。

『松川事件』を映画化した山本薩夫監督がふたたび同事件を題材に、ひとりの泥棒の人生を描いてゆく。『白い巨塔』や『皇帝のいない八月』といった社会派映画を撮り続けてきた山本がこんなコメディを撮れるとは。
作品全体を包み込むすっとぼけた温かみに思わず頬が緩んでしまう。メインは「松川事件」ではなく、あくまでひとりの泥棒の人生の一部として描いていることが、それを可能にしている。
何より、三國連太郎が演じる東北弁の人のいい泥棒のキャラクターが好きすぎる。『飢餓海峡』が三國さんの最高傑作だと思っていたが、超えられたかも知れない。
明るいコメディにも関わらず「保身を捨てて守るべきもの」という質量のある題材を扱っており、『新聞記者』や『白い巨塔』のような社会派作品にも通じるところが、やはり山本薩夫監督作品。面白くて、為になります。