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フェイトレス 〜運命ではなく〜のmiのレビュー・感想・評価

3.7
地獄を見たと、見ていない人間は口にする。
しかしそれは経験していない人間の、単なる軽々しい言葉でしかない。
幸福とはなんなのか。
強制労働を強いられ、膝に蠢く虱を見つめながら、死体と共に運ばれる、ジュルカの虚ろな目。
その眼は、夕食のスープに並ぶユダヤ人達の『スープ』だけを見つめていた。

言葉にするのは、簡単だ。
同情するのも然り。
しかし、生きるということはここまで過酷なものなのか。
死ぬ事へ幸福を感じ、生きて自国へ帰ろうと叱咤激励する仲間たちをも憎む彼の思いこそ、
人間本来の感情なのだろう。
心が潰れ、怒りを忘れてしまった彼の。

私の大好きな映画「海の上のピアニスト」や「マレーナ」などの撮影監督として知られる
「いつか眠りにつく前に」のラホス・コルタイの監督デビュー作。
ダニエルクレイヴが特別出演しています。
この作品は簡単に泣くなんて出来ません。
事実を突きつけられた時、人はこういう感情になるのか、と噛み締めさせられます。
でも見るべき作品。
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