緑

恍惚の人の緑のネタバレレビュー・内容・結末

恍惚の人(1973年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

自分が生まれる前から森繁久弥はおじいちゃんだった。
と思いきや、wikiによると本作当時は60歳とのこと。
いろんな人の葬式に参列してはコメントする係の人ではなく
すごい役者さんだった。

展開の速さと時系列に沿ってのシーンのインパクトの強め方、
登場人物たちのドライさで重いテーマながらとても観やすい。
嫁いびりにサラッとしか触れないことも観やすさに貢献。
乙羽信子がいいキャラ。
森繁孫の物言いにはギリアウトと感じるところも。

終盤の電話のベルで森繁が動揺してからのラスト徘徊、
高峰が見つけてからの大樹を下からなめて空の太陽までの
カメラが最高……!!
揺れ方/ぶれ方と森繁の内面が完全にリンク。
天才か。

森繁が亡くなり遺されたホオジロに
「もしもし」と呼びかけて涙を流す高峰。
繰り返されていた森繁の「もしもし」がこう回収されるとは。

森繁の台詞や周囲との噛み合わなさに
思わず笑ってしまうシーンもあった。
しかし笑った直後に、
現代の価値観としては
ここは笑っちゃダメでは……などと考えてしまい、
コンプラコンプラうるさいのには辟易、
でも病人の振る舞いなのでやっぱりここは……とか
たぶん昔の映画の鑑賞に於いては
余計でしかないことが何度も頭をかすめてしまった。
こんな世の中でなければもっと純粋に楽しめただろう。
緑