恍惚の人の作品情報・感想・評価

「恍惚の人」に投稿された感想・評価

LEON

LEONの感想・評価

3.8
これは人間の物語のようで人間の物語ではない。

つまり生き物とはなんたるかを真正面から見つめ、他人事ではなく決して背けてはいけない物語である。

『あれは人間じゃないよ。動物だよ、動物。犬や猫とおんなじだよ。』

恍惚の人となった祖父を見て言い放った孫のさりげなく言った言葉が、強烈にココロに突き刺さる。

痴呆症がまだまだ世間には一般化されずタブー視されていた時代(1972年)に、老人の痴呆症を描いた有吉佐和子の長編小説を映画化した文学作品。

当時は賛否両論あった衝撃的小説も、大ベストセラーとなる。


人間は何故、老いるのか…何故、痴呆するのか…。

長年連れ添った妻を忘れ、息子を忘れ、徘徊したりご飯を食べては数分後には「お腹が空いた」と。

記憶をなくすだけならまだしも、むしろ子供に返ったかのような予測不能で理解できぬ行動。

感情を突如爆発させ、夜中だろうが人ごみだろうが関係ない。

痴呆になり我が儘放題な行動は〝赤ちゃんに戻った〟なんて言う人もいる。

しかし自分が思うに、それは少し違うんじゃないかと…。

人間以外の生き物(動物)は靴も履かなければ洋服など着ない…お腹が空けば食料を探して食べる…糞尿だってしたい時にする…眠たくなればいつでも何処でも寝る…どこか痛ければ場所など関係なく鳴き声をあげるだろう。

しがらみも無い、忖度もない、一目を気にする事もないし、オシャレもしない…そもそも言葉すらないのだから。


地球という惑星の中では、人間などちっぽけな存在でしかない。

あらゆる自然界の領域を人間のエゴによって犯し続けるのは、もはや人間自身では止められず自らが人間崩壊へ向かう宿命でしかない。

喜び・感動・悲しみ・怒り・恨み・憎しみ…そして愛する感情は、地球上で人間だけが持った美しい特権でもある。


しかし、もし人間が人間でなくなったなら…。

人間が本能で生きる本来の生き物の、真の姿になるとは一体どういうことか。

人間が人間から〝解放〟される最後のエゴが〝恍惚の人〟なのかもしれない..★,
nanamonta

nanamontaの感想・評価

3.2
「おじいちゃん‼︎」言いまくり。観てるこっちが気狂うくらい「おじいちゃん‼︎」
そんなに何回も言わんでも…

森繁じいさんが認知症の役。
しかし私はあのおじいちゃんを受け入れられない…なんか最後美化されてる気がしたけど、やはり受け入れるの難しい。。

実の息子は役立たず。あーあ。
ボケ老人を描いた力作なのだが、森繁久彌と高峰秀子の迫真の演技がリアリティを生んでおり、観ているのが辛くなる映画だった。

しかし、この映画中に「おじいちゃん」という単語は何回発せられたのだろうか?
物凄い数である。

小鳥を見て涙する高峰秀子の表情が美しい。
時間経過が早すぎて、状況認識までに追いついていけなかった。
1つ1つの知障行動に対して、時間経過が多大にあったっぽいが
最初は冬だったのに気付いたら夏だったりとか…
ぽんぽんと次から次へとシーンは移り変わっていき
さらにモノクロなのでとにかく時間経過が分かりづらい!!
よって超短期間で1の障害から10の障害まで発症した風な…

たぶん映画であっても尺的時間が足りないんだと思う
もっとじっくり作ったならば何かしらに共感しえたかもしれないが
共感するより何より先に終わってしまう、という感じ。
見ているこっちが置いていかれた感が存分に残る。
ゆえに最後に高峰秀子が、祖父が亡くなった際に
皆はやれやれと思っている中で、一人感慨深くなっている点など
どうもそこまで共感できないし
「いつのまにそこまで親身になってましたっけ?」ってなくらい
高峰秀子の介護に対する変化も全然見えてこないままだった。

しかし森繁久彌が素晴らしい。…と言っていいのか(^^;
かなり面白い。
多めのアップショットドキュメンタリー調のカメラワーク(少々小賢しさもあるが)に目を引かれつつも、圧倒的に高峰秀子が素晴らしい。
森繁の奇行に驚く仕草が一々絶妙。
このデコちゃんのリアクション芸こそがスリルを引き出し、単なる社会派映画の枠を飛び越えている。
小市民的な投げやり感を垂れ流している田村高廣も素晴らしい。
初)特養などの施設がまだ整備されていない時代の老人介護話。森繁御大の呆けップリと高峰サンの献身ぶりが凄い…今ならすぐ施設に入れれば「ハイ、解決」って問題もそうはいかない嫁のストレスは中々伝わりにくい…(ノ-_-)ノ~┻━┻介護問題は避けて通れないこれからも問題です…
再鑑賞。
やはり豊田監督、森繁さんコンビの最高傑作になるだろう。
改めてこの時代にここまで認知症老人と嫁の関係性について掘り下げていることに驚くばかり…
名作の中の名作。認知症を映画的に美化することなく極めてリアルで厳しいタッチで気が滅入りそうになる。そしてだからこそ甲斐まみえる救いが美しい
まこー

まこーの感想・評価

5.0
すげえ映画だとは思うけど、ラストの高峰秀子が余計。でも『放浪記』の高峰秀子はたまらない。
tjZero

tjZeroの感想・評価

3.9
妻を亡くしてから精神を病み、認知症状が出てきた老いた男(森繁久彌)と、支える長男一家との葛藤を描く。
個人的にメゲてる時に観たので、余計に落ち込んじゃうんじゃないかと危惧してたけど、出来る事からやるしかないんだな…っていう静かな勇気みたいなモノをもらえた。出来がいい証拠。
子どもに返るってだけなら可愛くていいけど、脳以外は頑健な大人の男性だから、面倒をみるのは過酷。自分も経験があるので、リアルな怖さが身に迫った。よく出来たサスペンスのような味わいもある。
でも、ただしんどいだけの映画じゃなくて、名優森繁さんが時折見せるとぼけたユーモアやホッとさせる表情が救いになってる。
それでいて、”美談”や”きれいごと”にも収まっていないバランスがお見事。
あえてモノクロで撮っているのも生々しくなり過ぎずに抽象化できていて、作品の質を上げている。
半世紀前の作品だけど、現代でこそバリバリ通じる題材だし、古びていない。一気に観れちゃうパワーがある。
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