午後

ベン・ハーの午後のレビュー・感想・評価

ベン・ハー(1959年製作の映画)
4.0
あまりの長さと史劇映画全般に対する苦手意識のため観ていなかったけど、観てみたらおもしろい!ユダヤ人の主人公ベン・ハーとローマ帝国をめぐる壮大ないざこざが、ところどころイエス・キリストの生涯とすれ違う。この同時代の出来事としてのイエス・キリストの描かれ方がすごく新鮮で、顔や声を直接描かない写し方も良い。磔刑のシーンで十字架の下の血溜まりだけを写したり。あとは山上の説教と思わしき場面で、大勢の人々が各地から集まってくる様を傍観者として眺めるシーンが、当時はキリストの活動はこういう風に見えていたのかもと、ローマが危険視するのも納得できる。
スペクタクル映画としての見せ場はなんと言ってもガレー船での海上戦と戦車レース。特に戦車レースの立ち昇る砂埃、馬の足音、臨場感は凄まじい。それにしてもローマ人の馬車ずるくないか?あれがありなら全員あの馬車にすればいいのに。でかい大会の割にレギュレーションが緩過ぎる。
70mmフィルム撮影による横長の大ぶりな画面による、絢爛な絵巻のような構図が多い。時折リューベンスの宗教画をすら思わせる力のある画面がある。最初の東方三博士の礼拝とか。
主人公がローマ帝国を諸悪の根源とする、いささか雑な括り方で物事を捉えているのに対し、映画全体としてはそこまで一面的には描かれていないのもおもしろい。例えば総督ピラトが聞き分けが良かったり、対立がはっきりした後もフェアに話をしてくれたりする。かつての親友でありまた宿敵でもあるメッサラも、人間的な弱さや気高さを隠さない。あるいは立場を越えて命を助けられた恩を忘れないアリウスとか。
一方でメロドラマパートが緩慢で退屈。あと最初の序曲パートで5分以上同じ画面のまま、ただただ序曲を聞かされたのはビビった。時間の使い方が雄大。音楽・衣装も良い。あと指輪が印鑑みたいに使われてたり、乾杯の仕方が今と違ったり、当時のローマの習俗?が垣間見れるのもおもしろい。
午後

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