午後

オッペンハイマーの午後のネタバレレビュー・内容・結末

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

ヒロシマ・ナガサキに対して目を背けるためだけにこの長さ?
フローレンス・ピューが出てくるシーンは良かった。トリニティ実験の名称は、ジーンが彼に教えたジョン・ダンの詩の一節から取られたらしい。騎乗位の最中に唐突に本棚の方に駆け寄り、抜き出したサンスクリット語の本の一節を無理やり音読させるくだりが凄かった。
ちょい役だけど、「林が最も好きな構造体だ」と言って林の中に佇み続けるゲーデルが可愛かった。
よく言われるような、原子爆弾を発明したことに対する苦悩のようなものはほとんど感じ取ることができなかった。世界に対して取り返しのつかない影響を与えることに対する躊躇いのようなものはあっても。
マンハッタン計画という国家的なプロジェクトを成功させた業績と、冷戦構造下では汚点となる共産主義シンパという経歴のジレンマ、この映画におけるオッペンハイマーの葛藤とは主にそれであって、自らの発明がもたらす帰結に対する負い目が作品のテーマではないのだなと思いながら観ていたが、そうだとするとあのシーンをラストに持ってきた意味が理解できなくなる。赤狩りのゴタゴタのパートはとにかく退屈で、映画館じゃなかったら最後まで観られなかった。

映画の中で描かれていないものばかりをどうしても意識してしまって、作品そのものを純粋に観ることができない自分は、敗戦国の人間なのだと強く感じた。
「=原爆の父」としてではないオッペンハイマーの生涯を描くという試みだが、アメリカにはそれができてしまうということ自体に何かやるせなさを覚えてしまう。レヴィナスが言う意味での「顔」の不在。

主題的についての是非はともかく、ノーランの映画を観るといつも思うのは、音の使い方や画作り等から察するに、明らかにスクリーンで体験するための作りになっているのに、あまり効果的とも思えない時系列シャッフル等、劇場での鑑賞には不向きとも思える、やたら小難しい構成にするのはどうしてなんだろう?
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