菩薩

再現の菩薩のレビュー・感想・評価

再現(1970年製作の映画)
3.8
アンゲロプロス長編一作目。短編『放送』がヌーヴェール・ヴァーグの中に仄かにアンゲロプロスが香る作品だったのに対し、ここから既にアンゲロプロスだと一目で分かるロングショットにワンシーン・ワンカットの多用、360度パン、かつ後の未完の「20世紀三部作」への連なりすら感じさせる作品。死にゆく村で起きた一件の殺人、容疑者はその妻と情夫、真相を暴こうとする警察とジャーナリスト(アンゲロプロス本人!)の目線から事件を「再現」していくお話。寂れた地方都市の暮らし、都会に、国を越え出稼ぎに出るしか術の無い夫、残される妻とその子供達、娯楽・享楽無き村で尚暮らし続ける手段としての関係性。地方と中央との共存、崩れゆく世界で朽ちてゆく人間性、土の中に埋められる死体と玉ねぎ、この世に実りゆくは悪意かそれとも。
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