さすらいの用心棒

天と地とのさすらいの用心棒のレビュー・感想・評価

天と地と(1990年製作の映画)
2.0
上杉謙信と武田信玄の闘いを描いたスペクタクル時代劇。

本当にひどい映画だった(笑)
とくに人間の描き方が最悪で、まったく一貫性がなく、ドラマがない。無駄に荘厳で、無駄に金がかかっていて、無駄にエピソードが多く、すべてが無駄。さらに不自然なカッティングが違和感を増長させていて、しんどい。
カメラマン・前田米造の素晴らしい映像美や、役者の迫真の演技、小室哲哉の流麗な音楽、50億円という破格の製作費など、「一流の映画」の条件は充分すぎるほど揃っているのに、角川春樹が監督したばっかりにすべてがドブに流れた、というバカさ加減は見ていて面白いかも知れない。
黒澤明の『影武者』を見て失望し、黒澤から握手を拒否された角川春樹が私怨で製作したのが本作だけど、結果的に、黒澤の足元にも及んでいないどころか「角川映画」の恥になっているのは、すこし哀れ。
ただ、ラストの「赤と黒の合戦」シーンは日本映画屈指の壮麗さで、その迫力には素直に圧倒された。『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』など後世の作品にも影響を与えている点から見ても重要な場面だったけど、無能な終幕の仕方でその感動も台無しに。本当にセンスがなかったんだろうな。
やっぱり監督選びは大事だなと思う一作。