よーだ育休中

借りぐらしのアリエッティのよーだ育休中のレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
2.0
《人間に姿を見られてはいけない》
人家の床下にひっそりと住み着き、生活必需品を人間からこっそり《借りる》事で生活している小人族。数少ない小人の生き残りである14歳の少女・アリエッティは、初めての《借り》で心臓病を患う少年・翔に姿を見られてしまう。


小人の視点から描かれる日々の営み。視点がミニマム化される事で日常の風景が興味深いものになる。こっそり家の中を改造しているファンタジーな様子も良い雰囲気。(縮尺がおかしくないかと感じるところもある。)

細かい道具や背景が綺麗。音楽も世界観にマッチする曲調で素敵。海外の音楽家を起用するのはジブリ作品初の試みとの事ですが、原作が海外の作品である本作の雰囲気に本当に合っていると思う。


今作は最終的にビターテイストな着地を迎える。《私達は私達で希望を持って生きていくわ。貴方も大変だろうけど頑張ってね。》的な。これはこれで一見前向きな終わりに見えるものの、物語後半のお互いに見下し合う様なスーパーネガティブ口撃が最後まで引っ掛かってしまい、スッと腹に収まらない。


小人と共存したい人間。
人間は危険だと信じている小人。

長い間近くに居たのに。同じ家に共存していたのに。どうしてこのような結末を迎える事になってしまったのか。それは《相互理解を怠ったから》に他ならないのでしょう。

《小人達を知りたい》勝手な好奇心から強引な行動に移り、小人に恐怖を与える人間。

人間の物を《借りて》おきながら、歩み寄る姿勢を見せない頑固な(ともすれば上から目線な)小人。

体格的に優位に立つ人間と、精神的に優位に立つ小人が徹底して相容れない様子。同じ言葉を話せるのに、同じ場所に住んでいるのに、対話をしなかった異なる種族。お互いもっと幸福な落とし所を見つけられそうなものなのにねぇ。


《アリエッティ達はドールハウスで幸せに暮らしました》なんて結末は陳腐なものになってしまったでしょう。この作品の終わらせ方としてはベターなエンディングなんだとは思います。が、なんともいえない後味。

前半の色彩豊かでワクワクする始まりからの落差についていけなかったかなぁ。