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借りぐらしのアリエッティのchanuのレビュー・感想・評価

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
4.0
身体は弱いが裕福で豊かな暮らしをするショウと、自由に屋敷中を駆け回り“借り”を主軸とした暮らしを送るアリエッティ、対照的な暮らしをする両者が、友情とも恋愛とも違う観点で交差していく。
それは命ある種族という生き物としての繋がりであり、高齢者なのか学生なのか、サラリーマンなのか主婦なのか、日本人なのかそうではないのか、そんなことは気にせずに一期一会で相互に気持ちの良いコミュニケーションをしたいし、きっとしたほうがいいと、特にコロナ禍であるからこそそんな日々の振る舞いを再認識させてくれるシーンが微笑ましくもかなり刺さる。

謎多き小人の一族が衰退の一途をたどることになった理由は明らかにはならないが、閉ざされた文明で生活してきたが故に亭主関白な夫と三歩下がったような妻が印象的で、小人にもそんな文化があったのかとそこは旧態依然とした人間(日本人)らしさを感じる。特に、外の世界からやってきたスピラーの登場は外国人を始めて見た江戸の人々のようだが、父のおおらかさとアリエッティの探究心が輝く場面でもあり、後に移住を決意するアリエッティ一家が、島国で暮らす日本人とは違う移住民族という特殊な種族であることを主張する。出身地が、出身大学が、境遇が同じであるという共感性はやはり急速に人の距離を縮める性質がある。
同類であることの共鳴と、異種属との親和、どちらも印象的で可能性を秘めた物語になっている。

人間に見つかってしまった彼女たちはもう二度と同じ暮らしは出来ない。それでもこの出会いを大切に、前向きに生きていく。

小人の生活は奥が深い。
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