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13回の新月のある年にのharuのレビュー・感想・評価

13回の新月のある年に(1978年製作の映画)
4.0
君が女だったら良かったのに。

男性から女性へ性転換したエルヴィラは、彼氏に捨てられ友人に慰められるも、心は晴れない。居場所を求めて、自分が育った修道院や元妻や娘、そしてかつて愛した男に会いに行くが…

1978年の作品ながら、全く古さを感じさせない哲学的な映画。愛を失った主人公が、自らの過去に居場所を求めて彷徨う話。
エルヴィラが性転換した理由は、本人の性自認が女だったからではなく、かつて愛する男に「君が女だったら良かったのに」と言われたから。そのためエルヴィラ自身も自らの性別については曖昧で、かつては結婚していたこともあったし、女性になった後も、男装して男娼を買ったり、元家族に「父親」として会いに行ったりもする。そんなエルヴィラは、彼氏には「おまえは女じゃねぇ!」と言われて捨てられ、「おまえは男じゃねぇ!」と男娼ズからボコられ、今の自分には居場所がないと孤独感を深めていく。
エルヴィラはとにかく愛されたかった。そのためなら「女」にも「男」にもなれたし、相手が望む自分にもなれた。でも「女」になっても彼は会ったばかりの他の女を選んだし、「男」になっても今更遅いと言われるし、「良い子」になっても引き取ってもらえなかった。でも自分ではどうしようもないことって、生きてたらあるある。
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