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ヒッチコックのゆすりのarchのレビュー・感想・評価

ヒッチコックのゆすり(1929年製作の映画)
4.2
ヒッチコック初のトーキーにして、英国で初のトーキーとみなされているのが本作『恐喝』である。
刑事のフィアンセが見知らぬ男性に強姦されそうになり、揉み合いの中でナイフで刺殺してしまう。真相に気づく謎の男による恐喝は刑事とそのフィアンセを襲うが…。というのがあらすじで、二転三転する緊張感の連続で正しくヒッチコック作品という感じだ。
『下宿人』がサイレント映画のあらゆる手法に挑戦した野心作であるならば、本作はトーキーの手法を実験的に多く取り入れた作品だろう。
笑い声と重なる笑う男の絵画、トラウマを抉るナイフの連呼等…そしてサイレント時代から受け継ぐイメージによって物語を紡ごうとする姿勢もしっかりある。本作はサイレント版とトーキー版の二種類があるそうで納得の作りとも言える。

クライマックスの追跡劇の大きな絵画はインパクトのあるシーンであり、またその後の屋上も今ならば「ウェス・アンダーソン」的だなんて呼ばれそうなカットでここ以外にも多くの作品に影響を与えた作品であることは間違いないのだ。
最後の最後まで笑う男の絵画によって締めくくる陰湿なラストも好き。ヒッチコックが当初予定していた捕まるパターンも良いが本作も充分いやらしい終わり方でいいと思うのだ。
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