イチロヲ

リリスのイチロヲのレビュー・感想・評価

リリス(1964年製作の映画)
3.5
作業療法士の訓練に従事している退役軍人の青年(ウォーレン・ベイティ)が、不思議な包容力をもつ統合失調症の少女(ジーン・セバーグ)に心惹かれていく。富裕層の患者たちが入院する療養施設を舞台にしている、ヒューマン・ドラマ。

戦場にて人生の虚無を悟った主人公が、研ぎ澄まされた感受性をもつヒロインに急接近。いわゆる、「ミイラ取りがミイラに」の系統だが、正気と狂気の玉石混交を、当事者目線の軽やかなタッチでスケッチしているため、独特の空気感に包まれている。

ヒロイン役を演じているのは、ベリーショート以前のジーン・セバーグ。蠱惑的かつ神秘的な佇まいが素晴らしく、不思議な妖力に引き寄せられる主人公との同調が促される。「生きるための活力としての性行動」というテーマ性が内包されているところもグッド。

「人間は如何にして大いなる精神を感得するのか」という心理現象に踏み込んでいる作品。男性目線で述べると、「神秘的な女性=カルトの女司祭=母親の代替」という方程式が絶対普遍。
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