すべりのっと

メシア・オブ・ザ・デッドのすべりのっとのレビュー・感想・評価

メシア・オブ・ザ・デッド(1973年製作の映画)
4.6
「私の元に来てはならない」
画家の父から不可思議な手紙を送られたアリエッティは安否を確かめるためアトリエに赴くがそこは不気味なほど人影がない港町。彼女は父の痕跡を探すが、、

終末のように人影がない街を美女がさまよう。絵画的カットの連続で映画となる耽美さ。
相当美的センスが高い映画です。ゾンビ映画なのに。
死といっても「死を思う」
いわゆるメメントモリを描いている感じ。

父の手記と共に映画が進み、
「私が私でなくなる」など不穏な言葉が並びだすと、月に吸い寄せられるように夜の砂浜に亡者があふれだし、じわじわと街が死んでゆく。
耽美的にホラーを描くことで「死」を哲学として思うようになる上品さ。
ゾンビ化の兆候で流す血の涙の美しさはなんとも言えない。

これまでゾンビといえばのロメロ至高主義者だったのですが、横合いから思いっきりぶん殴られた気分。
ゾンビ観念が固まっていない時期の傑作だけあって捉え方が斬新に感じました。
最近お姉さん血とはらわたバケツ一杯ねー!ってくらいのゴアテンションだったのでこういうハイソ残虐美は心が洗われるようです。