イチロヲ

アレで頭がいっぱいのイチロヲのレビュー・感想・評価

アレで頭がいっぱい(1986年製作の映画)
4.0
自閉症の療養のため、父親の義理の姉妹宅に預けられた青年が、周囲の人間たちが織りなす性行動と自身の妄想世界の狭間に落ちてしまう。閉塞的な青年の視点から、性的欲動の在り方を描いている、エロティック・ドラマ。原題は、そのものスバリ「性欲」。

ジャッロの名バイプレーヤー、アル・クライヴァーが父親役で登場するが、あくまでも自閉症の青年のジタバタ劇がメイン。能動的に性行動を引き起こすことができない人間の「性の処理問題」に対して、真摯に向き合っている作品とも捉えることができる。

本編内では、自閉症の青年による人間観察とエロ妄想がエンジン全開で展開。一輪のバラを手にして、虚ろな目で彷徨い歩く様子が印象鮮烈であり、ついつい「ガンバレ!」と背中を押してあげたくなる(実際にやると逆効果だろうけど)。

中学生男子レベルのエロ妄想を見世物的に扱っている内容だが、「女神と悪魔」のどちらとも捉えられる女性像に普遍性が感じられる。個人的には、人間を苦しめてくる最大の欲求「性欲」との熾烈な闘いを描いた作品という印象。
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